「魚釣り」のイメージが育児に役立つ? 認知行動療法

保護者の悩み
「自閉スペクトラム症(ASD)」という発達障害(神経発達症)のある人は、生活に支障が出るほどに好きなものに没頭したり、初めての場所・人に対して、強い不安を感じたり、いつものルーティンが崩れるととても辛い気持ちになることがあります。ASDの子どもを持つ保護者は、ほかの子と同じ行動ができないわが子にイライラしてしまったり、さらに叱ってばかりの自分に対しても、「私の育て方が悪かったのではないか」という自己嫌悪感を持つことも多いです。そのような難しい状況の保護者に、さまざまな心理療法が用意されています。
アクセプタンス&コミットメント・セラピーって?
親子の関係改善に効果をあげている認知行動療法という心理療法があります。認知行動療法の中に、体験や感情を語り、自分自身や子どもをありのままに受け入れていく「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」という心理療法があります。
育児を「魚釣り」に例えると?
語り合うときに役立つのが「メタファー(隠喩)」の手法です。育児を「魚釣り」に例えてみます。自分を「魚」と考えます。魚には向かいたい方向がありますが、それを惑わす「釣り針」が現われます。向かいたい方向を惑わす「釣り針」は何でしょうか。保護者の多くは、子どもを叱ってしまう場面を「釣り針」と考えたり、不安で過剰に関わってしまうことを「釣り針」と例えたりします。「自分は朝食を食べさせたいのに、子どもはほかのことに夢中で食べてくれないので叱ってしまった」という場合、保護者は「見事に釣り針にかかった」ことになります。「今日はお着替えのときに釣られてしまった」「朝は釣り針がいっぱいだから気をつけなくちゃね」そんな笑い話をしながら、保護者たちは育児を外から客観的にとらえることができるようになります。「釣り針」に気づくことができると、「釣り針」に食いつくかどうか考えることができるようになります。たとえ子どもを叱る場合でも、叱る行為を選択しているということで、以前ほど辛い気持ちになりにくくなります。
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先生情報 / 大学情報

駒澤大学 文学部 心理学科 准教授 岡島 純子 先生
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