まだ謎が多い光合成 分子レベルでの仕組み解明をめざす!

まだ謎が多い光合成 分子レベルでの仕組み解明をめざす!

光合成の負の側面を克服する

光合成はよく知られていますが、実はまだよくわかっていない部分も多く、その仕組みを理解しようと分子レベルでの研究が進められています。
光合成は、太陽エネルギーを使って水から取り出した電子で二酸化炭素を還元し有機物を作り出すプロセスです。植物の生存に欠かせない反面、生体にダメージを与える活性酸素が発生しやすい反応でもあります。この危険な活性酸素を植物が克服している仕組みがわかれば、より環境ストレスに強い植物の開発につなげることができます。
例えばキュウリは低温に弱い植物ですが、低温感受性は品種間で違いがあり、低温に弱い品種では、活性酸素を抑制する葉緑体のタンパク質複合体が低温ストレスで分解され、活性酸素による生育障害が発生することが判明しました。これに対し低温に強い品種では、タンパク質複合体が安定に機能し活性を維持します。こうした分子レベルの知見を踏まえて低温に強い品種が作れれば、冬場の温室栽培のコスト削減につながる上、メロンなどほかのウリ科植物にも応用が期待されます。

光合成の能力を可視化・数値化する

光合成の仕組みを調べるためには、光合成を正しく評価する技術が必要で、さらにそうした技術は植物の環境ストレス応答の評価に利用できます。例えば、暑さや寒さに対する植物の強さの評価はこれまで感覚的なものでしたが、その違いを定量化・数値化してはじめて遺伝的な解析ができるため、違いを評価できる光合成測定技術の開発が進められています。こうした技術は作物の育種や栽培管理に応用できます。

藻類の光合成にも着目

海の資源である微細藻類の珪藻についても、光合成の能力を向上させ、有用物質の生産などに利用しようと研究が行われています。珪藻は茶褐色の藻類で、陸上植物とは光合成に必要な光を集める色素やタンパク質複合体も大きく異なります。近年、立体構造の解析や機能解析とともに、ゲノムの解読や遺伝子導入技術の開発も進められ、珪藻は生物学研究に役立つモデル生物としても注目されています。

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京都大学 農学部 応用生命科学科 植物栄養学分野 教授 伊福 健太郎 先生

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植物栄養学、植物分子・生理科学

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メッセージ

最近の学生はタイムパフォーマンスを重視して、余計なことはしたがらない傾向にあります。しかし、高校生の間はぜひ「無駄」を恐れず、部活や趣味などいろいろなことにチャレンジしてください。一見無駄に見える経験は、人が生きていく上で支えとなる軸を増やしてくれるはずです。これからの世界はAIの発展でどんどん効率化が進むでしょう。そのような時代だからこそ、人と触れ合い、生の経験をたくさん積んで、機械にはない肌感覚や共感力などの人間力を身に付けてほしいです。

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