昆虫:進化・発展における人間の先輩に学べ!

何かの形で相互メリットがある「共生」
昆虫は、ほかの生き物と関わって生きています。よく見られるのは微生物との共生で、昆虫Aと微生物Bが利益を補い合っている関係(相利共生)です。この相利共生も、よく見ると共生する微生物が昆虫の食物になって食べられてしまう関係(栽培共生)、微生物が昆虫の主食を消化するために役立つ働きをする関係(消化共生)など、その形はさまざまです。
昆虫も農業をしている?
栽培共生の一例として、微生物である酵母と共生しているコメツキモドキという昆虫がいます。この昆虫は成虫が枯れた竹に穴を開けて、空洞内に卵と酵母を置いてふ化させます。その後幼虫は空洞内を歩き回って、親からもらった酵母をまき散らすのです。すると、竹の内側の表面の糖類を栄養に酵母が大量に増殖します。幼虫はそれを餌として成長し、成虫になります。
ここで、幼虫が「竹の表面で増えた酵母」を食べるからには、「竹」も栄養源になっているのではないかとの疑問が湧きます。そこで比較実験をしてみたところ、竹はまったく栄養源になっていないことがわかりました。この様子は、コメツキモドキが「ハウスの中で農業を行っている」ようなものです。
課題解決のヒントを昆虫から学ぶ
別の研究では、酵母と消化共生しているカミキリムシがいます。カミキリムシでは、その種類が異なると共生する酵母も異なったり、あるいは同じ酵母と共生していたりと、さまざまなパターンが見られます。現在、カミキリムシと酵母との関係性を整理して、どうしてそのようなパターンが進化したのかの考察が進められています。
こうした研究は、昆虫の生態を知るためだけに行われているわけではありません。人間も、生物の一種として何かと共生して生きています。人間よりも長い歴史を持つ昆虫の生態、進化の過程が、人間社会での「共生」に関わるさまざまな課題解決のヒントとして参考になるのではないかと考えられています。
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