オルタナティヴを構想する国際社会学

オルタナティヴを構想する国際社会学

国際社会学とは

「国際社会学」という言葉を聞いた時、①「国際社会/学」、②「国際/社会学」のどちらを思い浮かべたでしょうか? ①をイメージした人もいるかもしれませんが、正解は②の「国際/社会学」です。すなわち、「社会学」を「国際化」したのが、「国際社会学」です。もともとの「社会学」では、調査・分析の対象である社会は、国家と重なり合っていることが前提とされてきました。しかし、グローバル化が進展する現代世界においては、そうした前提の通用しない越境的な現象が増えてきています。そこで、「社会学」を「国際化」する必要が出てきたのです。

グローバル化とは

「社会学」の「国際化」を促した原動力こそが、グローバル化です。一般にグローバル化とは、人やモノやお金や情報が国境を越えて自由に移動する状況を意味しています。もはや、国家=社会と短絡できない世界に我々は生きているのです。それでは、今後もグローバル化が進むことで国家は消滅し、やがて世界は一つになるのでしょうか。おそらくそうではありません。一見したところ、国家とグローバル化は対立関係にあるように思われますが、それは一面的なものの見方にすぎません。実際には、グローバル化と国家とは共依存関係にあると考えられます。

もう一つの世界へ

21世紀の世界では、グローバル化の要請に柔軟に対応できる国家こそが、世界的な影響力を持っています。米大統領のドナルド・トランプが唱える「アメリカ・ファースト」とは、グローバル化に対抗するスローガンではありません。それは、グローバル化の果実を独り占めにしたいという剥き出しの欲望の表明です。現代のグローバル化は、世界を平等で公正な場所にするのではなく、より力を持つ者たちにさらなる力を授け、弱い立場に置かれている者たちをさらに虐げる方向へと作用しています。その流れを止め反転させる契機は、どのようにすれば生み出せるでしょうか。国際社会学は、より公正で平等な「もう一つの社会=世界」を展望するのです。

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先生情報 / 大学情報

群馬県立女子大学 国際コミュニケーション学部 グローバル社会システム課程 准教授 山岡 健次郎 先生

群馬県立女子大学国際コミュニケーション学部 グローバル社会システム課程 准教授山岡 健次郎 先生

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国際社会学

先生が目指すSDGs

メッセージ

日々のニュース報道などにおいて、「分断」という言葉を見聞きする機会が増えてきました。世界の政治指導者たちの中にも、そうした「分断」を無責任に煽り立て作り出そうとする者たちがいます。「国際社会学」とは、そのような動向に抵抗する学問分野です。人々や社会の間に壁を作るのではなく、橋をかけるような人間の営みにこそ眼を向けましょう。自己と他者とを線引きし隔てるのではなく、他者の中に自己を発見し、自己の中の他者と出会うプロセスに喜びを見出しましょう。大学とは、そのための場所です。

群馬県立女子大学に関心を持ったあなたは

群馬県立女子大学は、4学科からなる文学部と2課程からなる国際コミュニケーション学部を擁する公立女子大学です。
両学部ともに少人数教育を重視しており、教員による学生一人ひとりに目の行き届いた授業が展開されています。ディスカッションなどの双方向でのやり取りや議論を交えた授業により、学生同士刺激を受けながら、主体的に学問研究を深めることができます。