「エージェント」と「ゲーム」で! 都市問題のシミュレーション

「エージェント」と「ゲーム」で! 都市問題のシミュレーション

社会現象を予測する

「将来の日本の人口はどうなる?」「インフルエンザ感染者数のピークは?」など、社会現象の推定は、コンピュータのシミュレーションでできるようになりました。シミュレーションは、人・物・事が移り変わる原理を単純化した「モデル」を作成し、そこに条件を入力してコンピュータ上で模擬実験を行い、結果の確率を算出するという仕組みです。これからの社会現象のシミュレーションに役立つと考えられているのが「エージェントベースシミュレーション」や「ゲーミングシミュレーション」です。

住民一人一人を再現

エージェントベースシミュレーションは、「エージェント」と呼ばれるAIが自律的に動いた結果を見るものです。例えば、人口80万人の都市の人口推移をみるとき、80万人分のエージェントをコンピュータ内に再現します。年齢、性別、年収など、その人の特性をエージェントごとに設定し、心理学、行動経済学などから得られた行動原理も組み込みます。そこに「〇〇の制度を導入」などの条件に従って80万人分のエージェントがそれぞれに行動したら、全体としてどうなるかを見ます。この実験を何度も繰り返して、「人口10%減少の確率〇パーセント」などの推定ができるのです。

問題を「自分ごと」として感じてもらう

これにゲームの要素を組み合わせたゲーミングシミュレーションを、自治体で行った事例があります。エージェントが行動しているバーチャル空間で、自治体職員が住民として一日を過ごすものです。すると、個々のエージェントの動きがよくわかり、モデルやシミュレーション結果に対する信頼性を高めることができました。実際に自分が参加することで、シミュレーションの結果だけを見るのと比べて、問題を自分ごととしてとらえ、より納得できるメリットがあるのです。
今、地方都市では人口減少による問題が増えています。こうしたシミュレーションは、「買い物難民の数」「地価の変動」など、さまざまな予測に応用でき、問題解決につながるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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静岡大学 情報学部 行動情報学科 教授 李 皓 先生

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知能情報学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の出身地の台湾では、日本よりも工学系人材やエンジニア、特に情報系分野人材の社会的ステータスや収入が高いように感じます。スマートフォンやSNSプラットフォーム、情報システムが社会を変え、それに関わる企業が発展しており、技術で世界を刷新していく人が尊敬されているのです。そして、若い世代の多くが、「世の中をより良くして大金持ちになる!」という野心を持っています。これからの時代は、決められたことをするだけの仕事はなくなっていきます。あなたも大きな野心を持って、世の中を変える人になってください。

静岡大学に関心を持ったあなたは

静岡大学は、7学部を擁する総合大学のメリットを生かし、学生の知的探究心に応えることができる幅広い学問領域の教育を実施しています。大学の理念は「自由啓発・未来創成」であり、これは自由によってこそ自己啓発を可能にし、それを通じて、平和かつ幸福な未来を創り出すとの力強い思いを表明しています。
失敗を恐れず若々しいチャレンジ精神をもち、人の意見によく耳を傾け、それに学び、協調性豊かに自己主張ができる人の入学を期待します。