その家具は誰が作った? 地場の産地を通して知るモノの価値

その家具は誰が作った? 地場の産地を通して知るモノの価値

産地を知る

現在、国内の家具市場は大型量販店が高いシェアを誇り、そこで売られる家具の多くが外国産ですが、日本にも家具産地があります。その一つである旭川地域では、北海道産の木を使ったり、北欧風のデザインを取り入れたりして、産地としての特徴を打ち出すことに成功し、若者の参入も増加しています。

実際に作ってみる

同じく、静岡県中部にも大きな家具産地があります。近くには東京や名古屋という大消費地があり、製造から販売まで多くの業者が集まっていますが、産地の特徴という意味では、見えにくい地域です。家具産業全体が縮小傾向にある中で、産地としての特徴が見えにくければ、将来的に産地の弱体化につながる可能性もあります。
静岡産地が特色を打ち出すために解決すべき課題は、理論や知識を学ぶだけでは見えてきません。例えば木の産地に足を運び、林業の人たちと一緒に木を切ってみたり、家具を作ってみたり、販売してみたりと、材料の産地に身を置いて、生産から流通までのプロセスを実際に経験することで、初めて気づけることもあります。これまでの調査で、静岡産の木がほとんど使われていないことがわかっています。また材料の調達や加工、流通、販売、そして行政と、それぞれの役割が専門分化しすぎているために、家具産地の中のつながりが薄いこともわかってきました。

地域産業に目を向ける

経済の動きには、実に多くの要素、組織、人が絡むため、マクロ的な広い視点をもつことが不可欠です。しかし、そうした広い視野をもつためには、地場の産地を含めて、生活に最も身近な地域の経済に目を向けることが重要です。家具産地であれば、誰がどんな思いで作ったのか、どんな材料が使われているのかなど、その産地ならではのストーリーが見えてきます。そうしたストーリーが価格やスペックでは表せない価値を生み出して、消費者の選択を変え、それによって地域の産業がより持続可能なものになるのです。

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先生情報 / 大学情報

静岡大学 人文社会科学部 経済学科 教授 横田 宏樹 先生

静岡大学 人文社会科学部 経済学科 教授 横田 宏樹 先生

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地域研究、地域経済学

メッセージ

大学は日本全国にありますが、私たちは「ここでしかできない」研究や教育を大切にしたいと考えています。本学は静岡にありますから、これから入学する学生の方にも、この地域のこと、静岡でしかできないことを意識しながら学んでほしいです。そうした身近なところから、何かを見る視点や考える方法を身につけることが、日本全体、あるいは世界について考えることにつながるのだと思います。興味があれば、あなたも共に学びましょう。

静岡大学に関心を持ったあなたは

静岡大学は、7学部を擁する総合大学のメリットを生かし、学生の知的探究心に応えることができる幅広い学問領域の教育を実施しています。大学の理念は「自由啓発・未来創成」であり、これは自由によってこそ自己啓発を可能にし、それを通じて、平和かつ幸福な未来を創り出すとの力強い思いを表明しています。
失敗を恐れず若々しいチャレンジ精神をもち、人の意見によく耳を傾け、それに学び、協調性豊かに自己主張ができる人の入学を期待します。