抗がん薬の副作用を探る 起きやすい人の要因とは?

抗がん薬の副作用
多くの抗がん薬では投与後に、気持ち悪さや吐き気を感じる「悪心嘔吐(おしんおうと)」や、食欲不振といった副作用が出ています。特に抗がん薬を投与した最初の5日間はこうした症状が多く見られます。この副作用は患者の体重減少や生活の質の低下につながるため、副作用への新たな治療法を開発するための研究が行われています。
副作用が起きやすい人の特徴は?
悪心嘔吐の原因物質として、抗がん薬を投与すると分泌されるセロトニンとサブスタンスPが有名です。ただし、これらの物質を抑える薬を使っても、患者の6割には悪心が出てしまいます。
さらに悪心嘔吐を抑えるために、抗がん薬を投与された人の臨床情報を調査し、副作用の有無や患者の特徴が分析されました。その結果、同じ種類の抗がん薬を投与しても、悪心嘔吐が起きやすい人とそうではない人がいることがわかりました。悪心嘔吐が起きやすいのは、若い人や女性です。特に女性の場合、月経がある人は、吐き気が強い傾向が確認されました。一方で、悪心嘔吐が起こりにくいのは男性で高齢者ですが、いずれもその要因はまだわかっていません。現在より詳しく分析しようと、研究が続いています。
高齢者のがん治療への課題
高齢者のがん治療では、若年者とは異なる症状への対処が求められています。例えば体重の減少です。これまでに臨床情報の調査によって、がんの進行や抗がん薬の副作用などで体重が減少した高齢者では、抗がん薬の効果が出にくく、生存期間も短いことがわかってきました。特に最近の抗がん薬は1回で数十万円ほどの高額なものも使用されています。高齢者のがん治療では、強力な抗がん薬を使用するだけではなく、体重減少にも気をつけて治療を行うなど、副作用予防法や栄養管理にもより注意が必要です。これから急速に高齢化がすすむ日本において、より効果的で身体への影響が少ない治療方法を見つけることも重要であり、さらなる研究が求められています。
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東京薬科大学 薬学部 薬学科 教授 鈴木 賢一 先生
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