古くなった法はどのようにアップデートするの?

古くなった法はどのようにアップデートするの?

海の憲法

あなたは排他的経済水域という制度を習ったことがありますね。これは、国連海洋法条約と呼ばれる条約の制度です。この条約は「海の憲法」とも呼ばれていて、海洋に関する国家の権利や義務を定めています。全世界には195ほどの国があり、そのうちの169カ国とEUがこの条約に参加しています。世界の主要国のほとんどはこの条約に参加していますが、アメリカ合衆国のように不参加の国もあります。アメリカは条約の作成過程には積極的に参加しましたが、国内では歴代の政権と議会との関係性が影響し、まだ本条約に参加できていません。

法は古くなる

法は、作られたならば必ず古くなります。例えば、先の国連海洋法条約は、1982年の採択後一度も改正されていません。すると、その後に浮上した問題に対処できなくなった、という批判がなされるようになりました。例えば、地球温暖化や海面上昇のような問題は、この条約が作られた時には想定されていません。
それでは、古いままの条文を抱えて、各国はどうすればよいでしょうか。国連海洋法条約は、条文そのものは変えずに「実施協定」を作ることで諸問題に対処しています。1994年には深海底制度実施協定、1995年には国連公海漁業協定、そして2023年には海洋生物多様性に関する協定が締結されました(1995年の協定には、アメリカも参加できました)。
もう一つの方法として、新しい問題に対処できるように、古い文言に新しい解釈をつけて対応するというやり方もあります。もちろん、どんな解釈がふさわしいのか、世界中で意見の隔たりがあるのが普通です。

新しい時代と

社会のありようが変われば法も変わっていかねばなりません。法改正が難しいならば、それまでの間でできることを模索せねばなりません。国際法学では一番よい解釈を求めるために、条文だけでなく、国際判決や条約の交渉過程など、沢山の周辺情報を読み込みます。この時に、あなたのフレッシュな感性と次世代の「常識」も不可欠です。さあ国際法学を学んでみませんか。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東北公益文科大学 国際学部 ※2026年4月設置予定  准教授 樋口 恵佳 先生

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国際法、国際海洋法、国際環境法

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メッセージ

法学の醍醐味(だいごみ)は一つの文言からいろいろな解釈を導いて、その妥当性を戦わせるところにあります。論理的な思考方法や国語が得意な人、世界史や日本史が好きな人にはすごく面白いと思ってもらえるはずです。高校の勉強をしっかりやって、いろいろな本を読み、さまざまな価値観に触れてほしいです。受験勉強の渦中は苦しいですが、何かに打ちこむのはとても尊い作業ですし、ここで学んだことは大学生になっても生きてきます。今の時間を大事にして頑張ってください。

東北公益文科大学に関心を持ったあなたは

東北公益文科大学は、経済・経営、政策、地域福祉、国際教養、観光・まちづくり、メディア情報の6つの専門コースに加え、社会福祉士養成課程を設置し、地域や社会の課題に取り組む人材の育成を目標としています。1つのコースを軸足に他コースも幅広く学べるほか、「データサイエンス・AI 教育プログラム」の導入やダブルメジャーを選択することも可能です。