変わり続ける国連 政府をこえた新しい協力の形

国連とは?
世界には武力紛争、貧困、環境問題などさまざまな課題があります。それぞれの国がバラバラに行動していては解決できない問題に対して、「協力するための仕組み」として国際連合(国連)はつくられました。現在、193カ国が加盟している世界最大の組織です。国同士の対話や支援だけでなく、教育・医療・環境保護など多岐にわたる活動を行っています。1945年の設立以来の歴史の中で、この組織はどのように変化して、人類の課題にどう向き合ってきたのでしょうか。
政府を飛びこえて市民と手をつなぐ
国連は各国政府が参加する組織です。そのため、貧困国などへの支援も、政府を通じて行うのが基本的な枠組みです。しかし最近では、政府だけでなく、NGOや市民社会とも直接協力している例がみられます。例えば、中米のグアテマラでは36年間続いた内戦が1990年代に終結しました。その後の平和構築で、国連機関は政府だけでなく、大学やNGO、先住民組織とも直接連携しました。戦争の傷を癒やし、国内に残る差別構造を明らかにするプロジェクトに直接資金を提供したのです。これは当時としては画期的な取り組みでした。
信頼で築く新しい正当性
こうした国連の変化を研究することで、人類がどのような工夫で問題に向き合ってきたかが見えてきます。単に政策の成果を評価するだけでなく、国連スタッフと現地の人々がどう信頼関係を築くか、そのプロセス自体が重要な研究対象となっています。
SDGs(持続可能な開発目標)の策定過程でも、先住民、移民、障害者、女性など多様な非国家主体が参加しました。その結果、17の目標という膨大な内容になりましたが、これは「国家の声を聴くだけでは見えてこない国際社会」の表れと評価されています。現在は、各目標が各地域でどう受け入れられ実践されるか、「SDGsのローカライゼーション」という新しい研究テーマも生まれています。人類が共に生きるために、国連は今も変化し続け、本当に困っている人々のための組織になろうとしているのです。
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日本大学 国際関係学部 国際総合政策学科 准教授 眞嶋 麻子 先生
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