動物たちの生き残る技:VR技術で探る生存戦略

動物たちの生き残る技:VR技術で探る生存戦略

捕食者と被食者の駆け引き

弱肉強食の自然界では、多くの動物は生きのびるために、餌を捕え、 かつ天敵から逃れなくていけません。捕食者と被食者の間では、こうした生存を懸けた駆け引きが何億年にもわたって繰り広げられてきました。 その熾烈な歴史の中で高度に洗練されてきた彼らの戦略は、生物進化の中で磨かれてきた叡智とも言えるでしょう。

ヘビとカエルの戦い

ヘビとカエルは典型的な捕食-被食の関係にあります。両者は対峙すると、そのまま動きを止め、しばし睨み合いのような膠着状態になります。この場面の駆け引きを調べたところ、両者の状況はサッカーやラグビーなどの球技で見られるパスのタイミングの駆け引きに似ていることが判明しました。例えば、パスをするときに相手選手を十分に引きつけてからパスしないと、相手はパスされた方へ進路を修正してしまいます。これと同じように、カエルはヘビを引きつけてから逃げないと、ヘビに逃げる先へ進路を修正されてしまうのです。
こうしたことから、「ヘビににらまれたカエル」は恐怖に呑まれているのではなく、よりうまく逃げるために、したたかに相手の動き出しを待っている状態であると言えるでしょう。

仮想動物と現実の動物の戦いから、新戦略を探る

近年はVR技術が発展して、色々なことを仮想空間で行うことが可能になってきました。ゲームを楽しむだけでなく、自然災害など様々な危機的状況を再現して、どう逃げればよいのかをシミュレーションすることもできます。この技術を動物の戦略分析に適用することで、様々な状況で動物がどのようにうまく立ち回れるのかを調べることができます。例えば、ヘビがフェイントの動作を使うようになったらカエルはどうするのか、といったことをバーチャルのヘビと現実のカエルを戦わせることで検証できるようになるわけです。動物の持つ洗練された戦略を最新のデジタル技術で解き明かしていく、そういった試みが今まさに始まっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

新潟大学 創生学部 創生学習課程 准教授 西海 望 先生

新潟大学 創生学部 創生学習課程 准教授 西海 望 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

動物行動学、運動学、ゲーム制作

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の研究は、バーチャルリアリティ技術を活用して動物を仮想空間内の様々な状況にさらし、その生存戦略の解明をねらうものです。野外に赴き動物の行動を観察する一方で、コンピュータを操り仮想空間を設計したり、行動のシミュレーションをしたりもします。
生き物への関心や、戦略性を探る経済的な思考センス、スポーツなどで培った勝負経験、コンピュータや機械操作のスキルなど、様々な方面の興味関心とノウハウを結集させる必要があります。あなたの感性を活かして、是非一緒に新たな研究のフロンティアを切り拓きましょう!

新潟大学に関心を持ったあなたは

新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。