コメの収量と品質を高める! ドローン診断と品種改良

コメの収量と品質を高める! ドローン診断と品種改良

ドローンを活用してコメの品質向上

昨今の夏の暑さはコメの品質にも大きな影響を与えています。一部が白くなった米粒、「白未熟粒」を見たことがあるでしょうか。米粒の透明な部分にはデンプンがぎっしりと詰まっていますが、白く濁った部分は隙間があり、割れやすくなるのです。米粒の中のタンパク質が不足すると、白未熟粒となることがわかっています。タンパク質を作るためには、窒素が必要です。しかし、タンパク質が多すぎるとコメの味が悪くなるため、ちょうどよい量の窒素肥料を与えなくてはなりません。そのために、ドローンを使って上空からイネの栄養状態を診断し、適切な肥料の与え方を提案するシステムの構築が研究されています。ドローンによって精度の高い診断ができるようになれば、暑い夏でもコメの品質維持に役立つ可能性があります。

実りをよくする品種改良でコメの多収化

未来の食糧の確保のためにコメの収量の向上が不可欠です。収量とは単位面積当たりの収穫量のことで、コメの収量向上のためには1つの穂に多くの籾をつけることが必要です。ただし、籾数を多くすると実りが悪くなるため、実りをよくする品種改良が必要になります。イネにはインディカ型とジャポニカ型があり、インディカ型は籾数が多くてもよく実る傾向にあります。インディカ型の品種から実りに関する遺伝子を見つけて、ジャポニカ型の品種に導入し、多収品種を作る研究が進められています。現在、実りに関する遺伝子について、染色体上のおおよその位置がわかってきました。

コメ多収のためにもドローンは役立つ

コメの収量を高めるためには栽培管理も重要です。例えば、それぞれの品種の実りの能力に応じた適切な籾数をつけることがあります。籾数はイネが吸収した窒素の量で決まるので、窒素肥料によって調節が可能です。ドローンによる診断に基づいた籾数の調節技術の構築が研究されています。
このように、コメの品質と収量を向上させるために、栽培管理や品種改良など、多方面からの研究が進んでいます。

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先生情報 / 大学情報

石川県立大学 生物資源環境学部 生産科学科 植物生産系 作物生産学 准教授 塚口 直史 先生

石川県立大学 生物資源環境学部 生産科学科 植物生産系 作物生産学 准教授 塚口 直史 先生

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作物生産科学

メッセージ

イネの研究では、種子をまいて実際に育て、過程を観察して収量や品質を判定します。品種や環境条件などさまざまな違いがあるため、本質的な違いを見つけることは容易ではありません。私たちの目の前には「見ようとしなければ見えないもの」があります。その「見ようとして見えた」違いの理由が解き明かされる面白さや、解き明かされた生命現象の仕組みの美しさに魅せられて、私は研究の道を歩み続けてきました。表面上からは決して見えないものが見えたときの喜びを、あなたにもぜひ大学で感じてほしいです。

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人間の暮らしの根幹を支えている農業生産。その基盤となる自然環境。そして食べるということ。そうした人と自然との関わりをしっかりと見つめ、未来へ生かしていこうとすること。そんな思いを実現するために、本学では少人数制での指導体制(卒業研究指導時、教員1人に対し学生3人以下)を取っています。結果、就職率100%、官公庁就職率25%(2020年3月卒業生)という実績を上げており、地域社会のニーズに応えられるよう努めています。「住みよさランキング2020」全国1位の「ののいち」で私たちと一緒に学びませんか。