シミュレーションで農地の未来を描く 農村の豊かさを守るために

シミュレーションで農地の未来を描く 農村の豊かさを守るために

農村にある課題と魅力

農村計画学という分野は、農村や漁村など、いわゆる「非都市地域」が対象です。これらの地域には、美しい景観や伝統的な暮らしといった豊かな魅力がありますが、同時に人口減少や高齢化、農業の担い手不足といった深刻な課題も抱えています。農村計画学では、地域の魅力をどう引き出して、どのように伝えていくかを考えると同時に、課題の原因を探り、解決に向けた方法を多角的に検討します。農業、建築、社会学、情報技術など幅広い知識が求められます。

未来の農地を「見える化」

地域の農業者の高齢化や労働力不足が進む中、限られた人員でどうやって農地を守るかが重要な課題となっています。これを解決するために、農地の利用状況や農業者の意向の調査結果などをもとに、コンピュータシミュレーションを使い、将来の農地がどうなるかを予測する技術が開発されています。秋田県のある集落を対象とした研究では、農地を効率的にまとめたり、農業機械を共同利用したりするなどの工夫によって、20年後に耕作放棄地となる面積を大幅に減らせるという結果が示されました。視覚的なシミュレーションを地域の農家と共有することで、「このままではいけない」という気づきが生まれ、話し合いや協力のきっかけにもなっています。

リアルな未来像を現場に還元

現在のシミュレーション技術は、農地がどう変化していくかを色分けした地図などで示すことができますが、さらにリアリティのある「見える化」を進めていくことも必要です。例えば、3次元映像やバーチャル景観と連携させることで、より具体的で実感できる将来像が提示できれば、より多くの気づきや行動のモチベーションにつながるでしょう。また、研究成果を地域の人々と共有して、実際の農業やまちづくりの現場に役立てていく「還元」の取り組みも欠かせません。今後は、こうした研究がスマート農業や地域政策と連動して、持続可能な農村の未来を支える力となっていくことが期待されています。

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先生情報 / 大学情報

石川県立大学 生物資源環境学部 環境科学科 里山里海創成系 地域計画学 准教授 山下 良平 先生

石川県立大学 生物資源環境学部 環境科学科 里山里海創成系 地域計画学 准教授 山下 良平 先生

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地域計画学、環境計画論、農業経済学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学での研究は、まさに「大海原」のような広がりを持っています。どんなテーマでも、大学の授業だけでは完結することはなく、自分でどんどん新しい知識を継ぎ足していく必要があります。大変に感じるかもしれませんが、それこそが研究の面白さでもあります。知識がつながっていく瞬間や、思いもよらない分野との出会いが待っているからです。突き詰めれば突き詰めるほど、授業では習わなかった情報が必要になります。そこに挑戦することで新しい発見があり、新しい業界との出会いもあるでしょう。

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人間の暮らしの根幹を支えている農業生産。その基盤となる自然環境。そして食べるということ。そうした人と自然との関わりをしっかりと見つめ、未来へ生かしていこうとすること。そんな思いを実現するために、本学では少人数制での指導体制(卒業研究指導時、教員1人に対し学生3人以下)を取っています。結果、就職率100%、官公庁就職率25%(2020年3月卒業生)という実績を上げており、地域社会のニーズに応えられるよう努めています。「住みよさランキング2020」全国1位の「ののいち」で私たちと一緒に学びませんか。