空気中のCO₂を捕まえろ! 持続可能な社会のための新材料開発

CO₂だけを取り込む
地球温暖化の原因となるCO₂を効率よく回収するために、さまざまな研究が進められています。その核となるのが、空気中のCO₂を吸着する材料の開発です。従来は、大きさで分子を見分ける「ふるい」の役割を果たす材料が開発されてきました。最近は、化学的な「相性」で選別する材料の研究が進められています。
中でも注目されているのが、CO₂が近づくと構造が変化して、まるで口を開けるようにCO₂だけを吸い込む結晶です。この現象の原理はまだ完全には解明されていませんが、CO₂との特別な親和性が関係していると考えられています。
高温・低濃度でも吸着可能に
CO₂の回収で特に課題となるのが、「大気中のような低濃度でも、常温で効率よく吸着できるか」という点です。従来の吸着材は、冷やさないと十分な性能を発揮できないことが多く、冷却にかかるエネルギーが問題となっていました。そこで、より高温でも性能の高い材料の開発が求められています。希少金属ではない、鉄やマンガン、カルシウムなどの身近で豊富な、資源面で持続可能性に優れた元素であることも欠かせません。
また、吸着剤を再利用するために、吸着したCO₂を温度や圧力、あるいは光や電気で放出させる方法も研究されています。放出されたCO₂はボンベにためて利用するなど、実用化への道筋が着実に築かれているのです。
見えない変化を熱で読み解く
これらの材料の性能を正確に評価するには、CO₂を吸着した瞬間に材料の中で起こる変化をとらえる必要があります。しかし、それを直接見ることはできません。そこで、材料がCO₂を取り込むときに出るわずかな熱を測定して、そこから吸着量や吸着のしやすさを数値化する手法が開発されました。この手法によって、これまで見えなかった構造変化の仕組みを推測し、次の実験や材料設計へとつなげることが可能になりました。見えない現象を熱という手がかりで読み解きながら、より優れた材料を生み出す研究が進められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報

高知工科大学 理工学群 教授 大谷 政孝 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
物理化学、無機化学、高分子化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?