ナショナリズムはいつできた? 歴史を学ぶ意味とは

ナショナリズムはいつできた? 歴史を学ぶ意味とは

「ナショナリズム」の起源

ナショナリズムとは、国や民族といった共通の集団に所属しているという人々の自覚や、それを踏まえた行動・運動を意味する概念です。こうした自覚を持った人々を「ネイション(nation)」と言い、日本語では国民や民族と訳されています。例えば日本人であれば、「日本という国を担う日本国民である」という自覚は当たり前のように思えるかもしれません。ところが、こうしたナショナリズムという概念は普遍的なものではなく、実は人類の歴史に登場したのは比較的最近なのです。

ネイションの意味

通説では、ナショナリズムという概念は、1789年のフランス革命とともに生まれたと考えられています。ネイション(フランス語ではナシオン)という言葉は、現在では一般国民を表すのに使われていますが、もともとは貴族などのエリート階級を意味していました。それがフランス革命をきっかけに、一般人も含めた国民を指すようになったというのです。
これに対し、フランス革命から150年ほど前のイギリスのピューリタン革命時には、すでにナショナリズムの原型が芽生えていたと考える立場があります。その根拠は、革命の機運が高まる中で書かれた政治的な文章です。印刷技術が出始めた時代で、それぞれの政治グループが自分たちの主張を印刷してばらまきました。現代のSNSのような役割です。そうした印刷物をつぶさに調べてみると、ネイションという言葉が文脈に応じてエリート層の意味にも一般国民の意味にも使われていることがわかりました。つまりフランス革命以前にも、一般国民としてのネイションが少しずつ浸透しはじめていたと考えられます。

歴史からわかる物事の相対性

こうした研究から、現在私たちの国家の在り方の前提となっているナショナリズムの概念は、古くても380年ほど前に誕生したもので、普遍的ではないことがわかります。歴史を学ぶ価値の一つは、いま目の前にあるものは相対的であり、唯一の道ではないと教えてくれることなのです。

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白鴎大学 法学部  講師 小島 望 先生

白鴎大学 法学部 講師 小島 望 先生

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ナショナリズム、国民国家論

メッセージ

ナショナリズムという概念には、良いところも悪いところもあります。一人一人が国の担い手であるという自覚を持つことは国を回していくために不可欠で、これは民主主義にもつながりますが、同時に自分たち以外は排除するという力も必然的に働いてしまいます。ナショナリズムは「包摂」と「排除」が表裏一体で存在する概念なのです。選挙権が18歳から認められるようになり、高校生が政治に関わる機会は昔よりも増えました。選挙に行くときは、ナショナリズムのそういった特徴も意識してほしいです。

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