守備の「うまさ」はどう決まる? ソフトボール熟練者に見るコツ

スポーツのうまさ
スポーツにおける「うまさ」は何によって決まるのでしょうか。短距離走なら、足の速さ、つまりタイムが指標の1つになります。一方でソフトボールは求められる動きや判断などが多く、うまさの評価は困難です。例えば漠然と「守備が上手」と感じさせる人はいても、具体的にその人がどのような動きや判断をしているのかはわかっていませんでした。
守備に求められるデュアルタスク
守備の場面では、ボールを捕って投げる「運動タスク」と、ランナーの動きに応じて送球方向を判断する「認知タスク」を同時に行わなければなりません。このように2つのタスクを同時にこなすことをデュアルタスクといいます。1つずつ行えば問題なくても、2つ同時になるとどちらかに集中してしまったり、両方を十分にこなせなくなったりする場合があります。そのためデュアルタスクに長けていることが、守備のうまさを決める基準の1つになると、女子ソフトボール選手の技能分析から明らかになりました。
熟練者の視線の使い方
守備がうまい熟練者と、中級レベルの準熟練者の違いを調べる実験が行われました。選手の体に測定用のマーカーを取り付けて動きを分析し、さらにゴーグル型の装置を着用して視線の変化を探るのです。試合中の状況を再現して守備動作をしてもらった結果、熟練者は捕球時にボールを最後まで見ていないとわかりました。途中でボールから目を離し、ランナーとボールの両方が視野に入るエリアに視線を動かしているのです。そして送球方向をいち早く判断し、行動に移していました。一方準熟練者は捕球する瞬間までボールを見て、そのあとランナーに視線を移しています。そのため次の判断が遅くなり、守備の成功率が下がっていました。
例えば、練習で行われるノックは、主に運動タスクを鍛える方法で認知タスクはあまり伸びません。守備がうまい人を育てるためには、ノック中もランナーを配置して走らせるなど、試合に近い状況で認知タスクや周辺視野を鍛える必要があるといえるでしょう。
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順天堂大学 スポーツ健康科学部 助教 大田 穂 先生
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