人の気持ちに向き合いながら、環境にやさしい購買行動を考える

人の気持ちに向き合いながら、環境にやさしい購買行動を考える

そっと後押し

定価170円の文房具があるとします。それに対し、「そこにエコマークがついていれば200円出しても購入する」という人がいる場合、差額の30円分は、環境に配慮した購買行動をしようという意識の表れだと考えられます。購買行動を考える時に、その人がお金の損得ではなく社会全体にとって最適な解を選ぶ意思決定をすると、社会が良い方向に向かいます。
しかし情報の伝え方によって、人の意思決定は変わります。行動経済学では、意思決定に際して自発的な選択や行動のための後押しを「ナッジ」といいます。個人の行動や社会にとって良い方に向かわせるために必要なナッジの1つとして、情報の在り方や情報の見え方についての研究が行われています。

情報の効果は?

情報といってもさまざまな形があります。文脈もその1つで、「環境にやさしい」といった肯定的な言い方が選択の後押しになることもあります。ほかにもエコマークのように「ラベルとして集約されたメッセージ」も1つの情報です。研究の中では、ラベル付きの商品をいくらまでであれば買うのか、どういう人がラベルに反応するのかなど、アンケート調査によるデータ収集のほか、どんなデザインがどこに表示されれば反応しやすいのかなどを探求するために、人の視線を追う(アイトラッキング)実験によるデータ収集も行われています。これらのデータを分析して、情報の効果を計測します。

人は「お金」だけで動くのではない

行動経済学以前の経済学では、人を「お金を多く得る方を好む」といった合理的な経済人としてとらえられてきました。しかし、人は単純な生き物ではありません。情報の効果を計測したり実験すると、人は必ずしも合理的に自分の利得だけを最大化するわけではないことがわかります。実際、人は寄付や献血などの利他的な行動もとります。合理的でない人を対象に、人の気持ちや未来と向き合いながら経済を考えていく必要があるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

金沢大学 人間社会研究域 経済学類 教授 藤澤 美恵子 先生

金沢大学 人間社会研究域 経済学類 教授 藤澤 美恵子 先生

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経済政策、理論経済学

メッセージ

どの大学の経済学部でも、マクロ経済学やミクロ経済学などの基本的な講義は用意されていますが、すべての大学で多岐にわたる経済学の講義がなされているわけではありません。環境問題に取り組みたいなら、環境経済学、都市や地域の問題などに取り組みたいなら都市経済学や地域経済学の講義がある大学を選ぶ必要があります。特に、実験をおこなう行動経済学や実験経済学は、講義を受講できる大学が限られます。大学の案内やシラバスなどがWeb上で公開されていますので、確認してから大学を選択することをおすすめします。

金沢大学に関心を持ったあなたは

金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。