言語教育の「当たり前」を見直す

ことばを使って人と人をつなぐ
身近な中国語話者との交流やビジネス、映画や小説、ゲームを楽しむために学ぶなど、中国語学習の動機や目標は人によってさまざまです。文法や語彙(ごい)を覚え、発音練習を繰り返す地道な訓練は言語学習に欠かせませんが、使いながら覚えること、身に付けた力をどう生かすかも意識してみましょう。
自分の持っている言語レパートリーをフル活用し、災害時や困っている旅行者に手を差し伸べたり、地域社会の中で人と人をつなぐ力を養うことも重要です。
言語教育の「当たり前」を見直す
中国語の「簡体字」は、何度も手書きをして習得することが一般的ですが、文字の読み書きを苦手とする人もいます。また、大勢の前で音読したり、発表したりすることに抵抗がある人もいます。
手書きや発表はあくまで手段であり、中国語を使って何らかの目的を達成できることが目標です。簡体字は、スマートフォンやパソコンを使えばローマ字で入力でき、会話練習や翻訳もAIがサポートしてくれる時代になりました。こうした状況も踏まえた上で、教師の役割、言語教育の方法や本質の見直しが求められています。
言語教育におけるインクルージョンとは
中国語の特徴のひとつは「四声(しせい)」といって、声を高く平らに伸ばしたり、上げたり下げたりする4つの声調(せいちょう)で意味が変わることです。たとえば「ma」という音も、「お母さん」「麻」「馬」「しかる」など違う意味になります。大学を含む教育機関では、さまざまな特性や障害がある人も学んでいますが、聴力に障害のある人に限らず、「四声」の習得は難しいです。視覚障害や学習障害のある人、母語が異なる人など、それぞれ求められるサポートも異なります。
よって、誰もが学びやすい教材を開発することは難しいですが、誰も排除しないための言語学習環境を学習者とともに考え、言語教育の目標や方法自体を問い直すことで、インクルーシブな社会の実現に寄与できると考えられます。ことばを使って人と人をつないでいきましょう。
参考資料
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報

神田外語大学 外国語学部 アジア言語学科 中国語専攻 教授 植村 麻紀子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
外国語教育先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?