視能訓練の観点から「読む力」を考える

視能訓練の観点から「読む力」を考える

子どもの視機能の発達を促す

視力は年齢とともに発達しますが、弱視や斜視など視力の発達が妨げられている子どもたちもいます。その場合、訓練を行うことで視能矯正をし、正常な発達を促していきます。「視能訓練士」という目のスペシャリストが、眼科医とともに視能矯正のための視能訓練を子どもたちに対して行っています。また、眼科に来院する子どもから高齢者までさまざまな人たちの検査を担うのもその役割です。

読書と眼球運動の関係

生活の中で文章を読むことは、欠くことのできない大切な行動ですが、視力障害があると文字を読むことが困難になります。他にも、眼球運動や視覚認知機能などの問題で読むことが困難な人もいます。
学習障害、中でも文字を読むことが苦手な「読字障害(ディスレクシア)」の子どもたちもこれらの困難を抱えることがあり、支援をめざした研究が進んでいます。
例えば教科書を読む時、眼球は素早い動きと文字情報の取り込みを交互に繰り返します。文字列を捉えると、脳で文字の形の違いを見分けたり、音と結びつけたりという情報処理を行って初めて、「文章を読む」ことができます。
文章を読む時の眼球運動を計測することで、情報処理過程を推測する研究も行われています。

アセスメントや学習支援ツール開発への期待

読字障害は、文字の形を瞬時に見分けるのが苦手、音と結びつけるのが苦手といったさまざまな原因で、文字を読み理解することが難しくなっている状態です。原因は人によって異なるため、どこに苦手があるのかをアセスメントし、苦手に応じた方法で支援することで、負担の少ない効果的な学習につながります。
視覚のスペシャリストである視能訓練士が、視覚認知機能や眼球運動のアセスメントを通じて、読字障害の子どもたちの学習支援や支援ツールの開発に貢献できる可能性が期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 医療技術学部 視能矯正学科 教授 池田 結佳 先生

帝京大学 医療技術学部 視能矯正学科 教授 池田 結佳 先生

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眼科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

IT技術の進歩が目覚ましく、視能訓練士の仕事のやり方も、研究の手法もどんどん変わってきていますし、これからも加速度的に変わっていくでしょう。これまでよりもたくさんのことを学び、その知識をもとに物事を考えていく必要があります。まずは大学で、従来の検査法をしっかり学び身に付けた上で、新しい技術にチャレンジしてほしいです。また、視能訓練士は子どもから高齢者までさまざまな患者さんと関わりますから、自分と違う価値観を尊重できる感性も磨いておいてください。

先生への質問

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医療系・文系・理系と幅広い分野の10学部33学科を擁する総合大学です。医学部・薬学部・医療技術学部を擁する板橋キャンパスの最大の特長は、医学部附属病院が隣接している点。学生は救命救急センターやERなど最先端の医療を、実習を通し体感できる場ともなっています。都心へのアクセスも良好であり、キャンパス最寄りの十条駅から池袋駅へ7分程度で行けますので、ショッピングなども気軽に楽しめます。