手首の震えの症状を抑える! 患者の生活を助けるデバイス開発

手首の震えの症状を抑える! 患者の生活を助けるデバイス開発

人を助ける機械を作る

医療支援機器を開発する医用ロボティクス分野では、病気やけがの根本的な治療に用いるロボットのほか、一時的にでも症状を抑えて患者の生活を支援する機械の研究も行われています。事例の一つが「振戦(しんせん)」を抑制するウェアラブルデバイスです。振戦とは手や首、足などが意思とは関係なくリズミカルに震える症状のことで、物をうまく持てなくなるなど患者の日常生活に支障が出ます。パーキンソン病などさまざまな病気に見られます。

振戦の検出は難しい

まずは手首の振戦を抑制するデバイスを実現しようと、通常の手の動きと振戦を区別するためのソフトウエア開発が始まりました。例えば包丁で食材を切るなど、手は日常生活でもリズミカルな動きをすることがあります。意識的な体の動きは随意運動、意識に関係なく動くものは不随意運動と呼ばれますが、人の目で見れば2種類の運動は区別しやすいものです。しかし機械の場合は、随意運動をしているときでも「手がリズミカルに震えているから不随意運動だ」と判断して、動きを抑制してしまう可能性があります。

AIで運動を区別する

随意運動と不随意運動を機械に区別させるために、運動に関する複数の情報を組み合わせ、それらをAIに瞬時に判断させる方法が検討されています。しかし体から得られる膨大な情報の中から、どれを使えば効率的に判断できるかはまだわかりません。候補に挙がっているのはX軸・Y軸・Z軸の3方向への手首の加速度と、手首が1秒あたりにどれだけの角度を回転したかといった情報です。模擬的な振戦を発生させるデバイスを健常者の手首に着けて行った実験では、加速度や角度に関する情報を使って随意運動と不随意運動をある程度区別できました。
しかし実際の振戦は、模擬振戦のように常に一定の動きを見せるわけではなく、急に震えが大きくなるなど不安定な場面も多いです。振戦を正確に検出するために、多様な場面を想定した実験を行い、AIの精度を向上させようとしています。

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帝京大学 理工学部 総合理工学科 講師 福嶋 勇太 先生

帝京大学 理工学部 総合理工学科 講師 福嶋 勇太 先生

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メッセージ

私は学生時代、英語など苦手科目がいくつかありました。しかし大学院生になってから、研究者の職に就くにはどうしても必要だとわかり猛勉強した経験があります。どこで何の知識が役に立つかはわかりません。同じような苦しみを体験しないためにも、高校生のうちから苦手なことも含めてたくさんの挑戦をしておくとよいでしょう。例えば「英語を学んで海外旅行をしたい」というような、あなた自身がモチベーションを保てるような目標を持つと、何事にも挑戦しやすくなり、漠然と取り組むよりも楽しく挑戦できるはずです。

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帝京大学 宇都宮キャンパスは栃木県宇都宮市の北西部の高台にあるキャンパスで、理工学部の4学科(機械・精密システム工学科、航空宇宙工学科、情報電子工学科、バイオサイエンス学科)をはじめとして、医療技術学部柔道整復学科、経済学部地域経済学科が開設され現在は文系・医療系・理工系を擁するミニ総合キャンパスとなっております。それぞれの学問領域で交流を図りながら各分野のスペシャリストとして、将来、さまざまな分野の核として、地域に貢献できる人材を育成します。