まちの不安を安心に変える「地域のデータサイエンス」

まちの不安を安心に変える「地域のデータサイエンス」

災害発生時に役立つ地図-自分で守る-

洪水災害や土砂災害の発生の恐れのある場所を示した「ハザードマップ」は、2000年代初頭にわが国で多発した洪水災害を受けて2005年に改正された「水防法」を契機に作成が義務化され、現在では全国でこれが作成・公開されています。ハザードマップには避難場所や避難所の位置が明記され、現在では多言語対応で作成されているほか、スマートフォンでも見ることができるようになるなど、災害時の避難行動支援に欠かせないツールとなっています。

災害対応で用いられる地図技術-地域を守る-

災害発生時の対応に求められるものには「被害状況」と「避難状況」の把握が挙げられます。災害対応の現場では、関係者がその状況を共有・理解するための方法として、数値でまとめられた「一覧表」ではなく、「地図」による集約が行われています。地図の作成には、GIS(地理情報システム)という技術が用いられ、「空間的」「視覚的」な状況把握が可能になることから、迅速な災害対応につながっています。この技術は、熊本地震(2016年)や能登半島地震(2024年)などでも活用され、地図をもとに課題整理や各種調整が行われたうえで、被災者支援や避難所対応が実施されました。

地域のデータサイエンスとしての地理学

日常の生活空間を「位置情報」と「数値情報」から、GISを用いて「地図」として表現することでさまざまな「地域のカタチ」を伝えることができます。人口と年齢から高齢化率の偏りを、住宅位置と土地の高低から洪水災害による浸水リスクを提示することなどがその一例です。この技術は、災害や防災だけでなく、まちづくりや都市計画にも役立っています。近年、注目されている「ドローン」の活用においても、その航路設計には、地理情報システムが用いられるなど、地域のさまざまなデータを扱う地理学は、地域を支える情報科学、地域のデータサイエンスとしてこれからの発展が期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

帝京大学 経済学部 地域経済学科 教授 坪井 塑太郎 先生

帝京大学 経済学部 地域経済学科 教授 坪井 塑太郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

人文地理学、応用地理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

災害の記憶は月日とともに徐々に風化していきますが、被災における「個人の記憶」を「社会の記憶」にするための手法のひとつとして、被災後の地域変化を「地図」として記録するための研究に取組んでいます。「地理」といえば、一見、地名や特産物を暗記する学問だと思われがちですが、元来は、古代ギリシャ時代に起源をもつ伝統ある学問です。現代の地理学ではこの学問体系を基盤としながらも、さらにGIS(地理情報システム)を用いた地域計画や災害対応が実施されるなど、「地域のデータサイエンス」としても発展し続けています。

帝京大学に関心を持ったあなたは

帝京大学 宇都宮キャンパスは栃木県宇都宮市の北西部の高台にあるキャンパスで、理工学部の4学科(機械・精密システム工学科、航空宇宙工学科、情報電子工学科、バイオサイエンス学科)をはじめとして、医療技術学部柔道整復学科、経済学部地域経済学科が開設され現在は文系・医療系・理工系を擁するミニ総合キャンパスとなっております。それぞれの学問領域で交流を図りながら各分野のスペシャリストとして、将来、さまざまな分野の核として、地域に貢献できる人材を育成します。