偏見の壁を壊せ! 心理学でつくる「誰も置き去りにしない社会」

偏見の壁を壊せ! 心理学でつくる「誰も置き去りにしない社会」

若い世代にも残る偏見

性的マイノリティへの偏見は、大学生の間にも根強く残っています。旧来の性的役割や態度への認識も若い世代で依然として強く、「男らしさ・女らしさ」に沿わない行動が否定的に見られる場面が少なくありません。こうした状況は、性的マイノリティの若者のメンタルヘルスにも影響しています。「自殺を考えた経験」が一般の10代の3〜5倍、「自殺未遂」が4倍に達するという深刻なデータも報告されています。

歯車の組み合わせを考える

こうした現状を変えるために、さまざまな分野で研究が進められています。その一つが、社会問題を心理の視点から解決することをめざす「コミュニティ心理学」です。通常の心理学が個人の心の中を深く掘り下げるのに対し、コミュニティ心理学では人と人のつながりや社会構造そのものにアプローチします。例えるなら、いろいろな歯車が組み合わさって動いている社会の中で、「どの歯車をどう組み合わせればうまくいくのか」「どこに油をさせば全体の動きがよくなるのか」を考える学問です。その対象は、小学校での子どもの問題から震災被害を受けた子どものケアや紛争予防教育まで、広範囲に及びます。

当事者を知ることで「自分ごと」へ

性的マイノリティへの偏見の問題について、コミュニティ心理学では、偏見が生まれるメカニズムの解明にとどまらず、具体的な解決策を提案・実践し、その結果を分析・評価して、改善していきます。
具体例として、大学生を対象に実際にゲイのカップルを招いて講演を開催し、聴講した学生のアンケート回答を分析した研究があります。講演後、学生たちからは「自分たちと同じ普通の人なんだ」という気づきの声が多く聞かれました。自由記述の感想の「共起語」を分析したところ、「自分」「社会」といった言葉が当事者理解の文脈で多く登場し、問題を自分ごととして捉え始める変化が確認されました。この結果は、人が互いに向き合い、つながりを結び直すことで、偏見が変わっていく可能性を示しています。

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先生情報 / 大学情報

南山大学 人文学部 心理人間学科 准教授 池田 満 先生

南山大学 人文学部 心理人間学科 准教授 池田 満 先生

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コミュニティ心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

自分の半径30cm、つまりスマートフォンを見る時の目と画面の距離よりも外側に関心を持ってください。ネットがプッシュする偏った情報ではなく、自分の目と耳と心で情報をキャッチしてほしいです。そして、あなたの隣にいる人が何かのマイノリティかもしれないということを忘れないでください。性的マイノリティ、一人親家庭、奨学金をもらっている人、障害のある人。マイノリティと呼ばれる人は、どこかに突然現れて消える舞台装置ではありません。生身の人間としてあなたの近くにいるのです。

南山大学に関心を持ったあなたは

南山大学は、人文学部、外国語学部、経済学部、経営学部、法学部、総合政策学部、理工学部、国際教養学部の全8学部18学科を擁する、中部地区を含む西日本唯一のカトリック総合大学です。海外からの留学生も多く、国際性豊かなキャンパスです。
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