サバがマグロを生む? 水産業の未来を大きく変える技術

サバにマグロを生ませる!?
魚の養殖には大きなコストと労力がかかります。その負担を軽減する技術が「代理親魚技術」です。例えば、クロマグロの生殖幹細胞を、小型の近縁種であるサバに移植して、クロマグロを生ませれば、養殖にかかるコストを抑えられます。移植に用いる生殖幹細胞には性分化前に現れる「始原生殖細胞」、性分化後に現れる「精原細胞」「卵原細胞」の3種類があります。どの生殖幹細胞をドナーとして宿主に移植しても、ドナー由来の子どもを得られることがわかったため、クロマグロにおいては、採取しやすい精原細胞を使った実用化研究が進行中です。
代理親魚技術が未来を変える
また、味が良い、病気に強いなどの優秀な形質を持つ魚の育種を支える技術としても、代理親魚技術は注目されています。近年、海水温の上昇によって養殖魚が大量死し、養殖業は大打撃を受けています。高温に強い魚を作ることも水産業の課題です。また、例えばウシでは優秀な個体を何代にもわたって選別し、育種を進めてきていますが、魚の育種はあまり進んでいません。代理親魚技術では、冷凍保存した生殖幹細胞や、試験管内で培養した生殖幹細胞をドナーとして次世代を得ることができるため、今後は魚の育種を進めることに役立つと考えられています。
魚の不妊化
養殖する魚は不妊化しておく必要があります。養魚場から養殖魚が逃げ出すと、その地域にこれまでになかった遺伝子が広まってしまうからです。また、手間暇かけて作った優秀な系統の養殖魚を無断で複製される恐れがあることや、繁殖期に性成熟にエネルギーが使われて魚の味が落ちることも理由です。これまで魚を不妊にするには、3組の染色体を持たせる「三倍体化」が用いられていました。その処置によるストレスや三倍体化率のばらつきなどの課題がありますが、最近、ゲノム編集による魚類の不妊化も可能になりつつあります。
こうした代理親魚技術と魚の不妊化との組み合わせは、水産業の未来を大きく変える可能性に満ちています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
