「所得控除」は役に立つ? データで解き明かす税制と格差是正

「所得控除」は役に立つ? データで解き明かす税制と格差是正

税制から格差是正を考える

人々が得る所得には格差があり、これをある程度是正することは政府の重要な役割です。「公共経済学」は政府の役割と、その役割を果たすために必要な仕組みを考える学問分野です。その中で、社会保障や税制による「再分配効果」、つまり格差を縮める効果がどの程度あるかを研究しています。所得税という税金の計算をする際に重要なものが、収入(所得)から一定の金額を差し引く「所得控除」という制度です。これは家族構成や事情を考慮して税金の額を減らす役割を持っており、控除額が大きいほど税負担は軽くなります。この所得控除の効果をはじめ、データを使いながら、税制が格差是正に役立っているのかを検証するのです。

さまざまなデータが利用可能に

正確な実態把握には詳細なデータが欠かせません。かつての研究では政府の統計を使用するときに集計データ、つまり集計結果の数値しか利用できず、詳細な分析は困難でした。2000年代に統計法が改正され、現在は個人情報に配慮した形で家計の個票データ(回答者ごとの情報)を研究目的で利用できるようになりました。これにより、例えば「現行の税制は格差是正に役立っているのか」や「控除の仕組みをどのように変えれば格差是正が進むのか」などについて分析することが可能になりました。さらに近年は、確定申告などで集まる行政データの利活用も進んでいます。これにより、税負担の実態や税制の効果がよりリアルに見えるようになってきました。

データから見える意外な真実

控除は本来、所得の低い人ほど税負担軽減の恩恵が受けられる仕組みにすることが理想です。しかしこれまでの分析結果から、実は高所得者ほど利用している控除額が多くなり、結果的により多くの恩恵を受けていることが明らかになりました。所得格差の拡大が進む今こそ、データを駆使して制度のあり方を見直し、より適正な税制の再分配機能について考える研究が、ますます重要になっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

信州大学 経法学部 応用経済学科 教授 大野 太郎 先生

信州大学 経法学部 応用経済学科 教授 大野 太郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

公共経済学

先生が目指すSDGs

メッセージ

近年、老朽化により下水道管が壊れ、大規模な事故となるニュースが続いています。こうした出来事の裏にも、「お金(財政)」の問題が関係しています。社会課題に関心を持ち、解決策を考えるのが大学での学びです。高校生のうちから「今、社会で何が起きているのか」にアンテナを張り、幅広い情報に触れてほしいです。そして解決したいと思う疑問が見つかれば、それが進路を決めるきっかけにもなります。経済学やデータ分析のスキルは、その疑問を解き明かすための強力な武器になるはずです。

信州大学に関心を持ったあなたは

信州大学は、人文・教育・経法・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
松本、長野、上田、伊那に位置するいずれのキャンパスも、美しい山々に囲まれ、恵まれた自然のもと、勉学にも、人間形成の場としても、またスポーツを楽しむにも最適の環境にあります。さらに、地域との連携がきわめて良好であり、地域に根ざした大学としての特色も発揮しています。