雄花はエサでも雌花は毒? 植物と昆虫たちの深いつながり

雄花はエサでも雌花は毒? 植物と昆虫たちの深いつながり

雄花だけを食べる

垣根などにみられるヒサカキは、雄花と雌花が咲く株が別々の雌雄異株植物です。ヒサカキの花のつぼみを食べるガの幼虫がいますが、幼虫がいるのは雄花のつぼみばかりで雌花には一匹もいません。実は雌花のつぼみを食べると、このガの幼虫は死んでしまいます。ガの母親は、きちんと雄花を選んで卵を産みつけるよう行動を進化させているのです。
このように、植物の雌雄の違いがほかの生き物に大きな影響を与えていることが、最近の研究でわかってきました。これまで別々のテーマとして研究されてきた「雄雌の違い」と「異なる生物種間の関わり合い」について、ヒサカキとその周りの生き物を対象にそのつながりの解明が進められています。

花と昆虫、微生物のつながり

ヒサカキの花の蜜にはハチやアブなどさまざまな昆虫が集まります。昆虫たちが持ち込んだ酵母や細菌などの微生物は蜜の味や匂いに影響を与えることが知られています。
ある地域のヒサカキを調べると、雄花のほうが酵母の数が多いのですが、その理由は雌花の蜜の糖度が雄花より高く、酵母がすみにくいためだとわかりました。植物にとって望ましいのは、昆虫がまず雄花に来て花粉を体に付着させてから雌花に行くことです。ヒサカキの雄花は雌花よりも大きく香りも強いため、それに誘われてまず雄花に来た昆虫が、蜜が薄いので別の花、つまり雌花に向かうのです。ヒサカキもそのように進化したと考えられ、実際にある条件下で疑似進化のシミュレーションを行うと、派手で蜜が薄い雄花になることが示されています。

環境との関わりも明らかに

ヒサカキの雌雄差は、微生物や昆虫だけでなく、実を食べるメジロなどの鳥にも深い関わりがあります。もっとも、これまでの調査は2つの地域のヒサカキを対象としたもので、微生物の数に関しては、環境によっても違いが生じることがわかってきています。さらに観察する地域を増やして、ヒサカキと周りの生物および環境との関わりを明らかにすることが目標とされています。

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神戸大学 理学部 生物学科 生物多様性講座 准教授 辻 かおる 先生

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メッセージ

やりたいことがなかなか決められないと、つい焦ってしまうかもしれませんが、高校生や大学生の間は、好きなことを模索するための時間があります。「早く見つけないと」と考えるとしんどいので、肩の力を抜いて、「ちょっと楽しそうだな」と思ったことをいろいろ経験してみるのも良いかもしれません。私も自分が楽しいと思うことをやっていたら、今の道にたどり着きました。また、ぜひ海外に関することにも目をむけてみてください。高校生、大学生の若い年代だからこそ得られることがたくさんあるはずです。

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