1+1>2?  生物多様性の価値について考える

1+1>2?  生物多様性の価値について考える

ダーウィンも指摘していた生物多様性の力

「一種の植物が植えられた区画と、複数の種が混植された区画を比較すると、後者でよりたくさんのバイオマスが見られる」。これは、ダーウィンが1859年に『種の起源』で記した言葉です。
同じ種類の植物ばかりが整然と並ぶ土地と、さまざまな種類の植物が混じり合って育つ土地では、どちらがより「元気」で生産性が高くなるのでしょうか。この問いは昔から生態学者や農家の関心を引きつけ、さまざまな実験が行われてきました。そして多くの研究が、ダーウィンの言葉通り「多種多様な植物から成る生態系の方が、生産性が高くなる」という結果を見出しています。

混植すると生産性が上がる不思議

北海道で「光が大好きなウダイカンバ」と「日陰に強いトドマツ」などを混ぜて育てる実験が行われました。すると30年後、混植した森は単植の森よりも大きなバイオマスを記録しました。単なる平均を超え、「1+1」が2以上になったのです。
勝因は、「特技の違い」です。混植した森では、豊富な光を使ってグングン成長するウダイカンバが上層を、日陰でゆっくりと成長するトドマツが下層を占めることで、立体構造が発達します。異なる個性が競争を緩和し、光という資源を余さず使い切るのです。これが、生物多様性が生産性を高める代表的なメカニズムの一つです。

生物多様性の力で未来を変える

生物多様性を考えることは、単に「自然を守ろう」という話に留まりません。人間社会はさまざまな生態系サービス、いわゆる「自然の恵み」の上に成り立っています。生物多様性の高い森の成長が良いということは、それだけ多くの二酸化炭素を吸収して、気候変動を食い止める力になり得ます。また、こうした仕組みを林業に応用して、環境を守りながら木材生産も増やす研究が進んでいます。
生態学の知見を駆使して、環境保全と経済活動を両立させる生物多様性の研究は、持続可能な未来に貢献する、やりがいに溢れた分野です。

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先生情報 / 大学情報

京都大学 農学部 森林科学科 森林生態学分野 准教授 辰巳 晋一 先生

京都大学 農学部 森林科学科 森林生態学分野 准教授 辰巳 晋一 先生

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森林科学、生態学、環境学

メッセージ

高校の勉強は、受験のためだけにあるのではありません。私自身、研究をしていて痛感するのは「理科や数学は、自然の謎を解くための強力な武器になる」、「国語や英語は、研究成果を世界中の人たちと共有するための必須ツールである」ということです。今は大変かもしれませんが、その知識は必ず未来の自分を助けてくれます。
進路選びで迷ったら、ぜひ自分の「好き」を大切にしてください。「好き」という気持ちこそが、学び続けるための最強のエンジンだからです。私も「自然が好き」という単純な動機でこの道を選びました。

京都大学に関心を持ったあなたは

京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。