なぜ私たちはホラーや異世界ものに引かれるのか

身近なサブカルチャーへの問い
ホラーゲームや異世界を舞台にした物語、不気味な雰囲気の映像作品は、今や多くの人に親しまれています。怪物が出てこないのに怖い空間や、理由はよくわからないけれど引き込まれてしまう物語も少なくありません。なぜ人は現実には存在しない世界を舞台とし、「怖さ」や「不安」を含んだ作品に引かれるのでしょうか。
源流はゴシック小説
その源流をたどると、18世紀後半のイギリスで誕生した「ゴシック小説」という文学ジャンルに行きつきます。ゴシック小説は、幽霊や怪物、古い城や地下迷宮といったモチーフを用い、人間が死の恐怖と向き合う物語を描いてきました。代表的な作品として、19世紀にイギリスで発刊された小説『ドラキュラ』が挙げられます。
ゴシック小説が生まれた背景には、宗教改革があります。カトリックでは、骸骨や儀式などを通じて「死」が可視化され、人間は「死ぬ存在」であることが明確であり、生の中に死が組み込まれていました。一方、宗教改革により台頭したプロテスタントでは、より合理的・科学的な考え方を重視して、奇跡や神秘といった「超自然的なもの」を否定しました。その結果、死は単なる「終わり」として扱われるようになり、死の生々しいイメージも覆い隠されていきます。
ゴシック小説はこの反動として、主に中世を舞台とし、カトリックの時代背景を持った世界観で登場しました。死を見つめ直すことによって、人間の生きている意味を考え直す、そういう機能をゴシック小説が担ったのです。
「死」を見つめるニーズは現代にも
宗教改革以降も文明が進化し、科学的には「死=無」としか捉えられなくなりました。しかし、人間は本能的に「死んだら無になる」という考えには納得できず、科学では説明できない「死の意味」を求めています。かつてゴシック小説が担っていた「死と向き合うことで生の意味を問う」という役割を担うものが現代でも必要とされており、小説ばかりでなくゲームや映像などにも広がっているのです。
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