言葉でつくられる「わたし」―言語とアイデンティティ

言葉でつくられる「わたし」―言語とアイデンティティ

“ I ”は本当に「わたし」?

あなたは自分のことを何と呼んでいますか。「わたし」「ぼく」「オレ」「自分」など、日本語には自分を表す言葉がたくさんあります。友達と話すとき、先生と話すとき、あるいは改まった場では、違う言葉を使うことがあるでしょう。ところが英語では、自分を表す言葉は基本的に “I” の一つです。この違いは、単なる言葉の数の問題ではありません。日本語では、相手や場面、社会との関係の中で「自分がどのような立場にいるのか」を言葉で示すことが多く、そこには自分のアイデンティティが表れています。つまり、言葉は単なる情報を伝える道具ではなく、「社会の中で生きる自分自身」を表すものでもあるのです。

母語ではない英語を話すということ

では、私たち日本語話者が英語を話すときには何が起こるのでしょうか。英語はもともとイギリスやアメリカなどの母語話者の言語ですが、現在ではそれ以上に多くの人が互いの母語の代わりに共通語として英語を使っています。このような状況では、英語の中にそれぞれの母語の発音や文法、コミュニケーションのスタイルの影響が表れることもあります。しかしそれは必ずしも「間違い」ではありません。大切なのは、相手に通じること、そしてコミュニケーションが成立することです。英語を国際語としてとらえる考え方では、それぞれの母語話者らしさが英語の中に表れることも自然なことだと考えられています。

言葉と人間、社会を研究する

このように考えると、言葉を研究することは、人が社会の中でどのように生きているかを考えることにつながります。日本人が英語をどのようにとらえているのかという「英語観」や「言語観」の研究では、英語を「ネイティブのように話すことをめざす言語」、「コミュニケーションのための道具」などと、個人によってさまざまなとらえ方があります。こうした言語観は、個人の経験や価値観、文化的背景とも深く関わっています。ぜひ、自分が普段使っている言葉や、英語との関わりについて考えてみてください。

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先生情報 / 大学情報

大正大学 文学部 人文学科 准教授 行森 まさみ 先生

大正大学 文学部 人文学科 准教授 行森 まさみ 先生

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社会言語学、英語教育、言語学

メッセージ

言葉には話し手のパーソナリティが表れます。コミュニケーションに使う語彙(ごい)や話し方も含めて、言葉は自分自身を映すものです。社会言語学を学ぶと、普段何気なく使っている言葉を少し距離を置いて見つめ直すことができ、自分や社会の見え方が変わってきます。言葉を通して人や社会を理解する視点は、大学での学びだけでなく、これからさまざまな人と関わる場面でもきっと役に立つでしょう。ぜひ身近な言葉から、人と社会のつながりについて考えてみてください。

大正大学に関心を持ったあなたは

大正大学は大正15(1926)年に設立された、2026年に100周年を迎える伝統のある大学です。6学部10学科の学問分野で文学や心理、歴史、メディアなど、多彩な学びを展開し、地域社会に貢献できる人材を目指します。キャンパスは東京都豊島区にあり、池袋・巣鴨からもアクセスしやすい立地です。全学部が4年間を同じキャンパスで過ごします。また、1学年約1200名の学生に対し、教員は154名。教員1人あたりの1学年の学生数が7.8名と、教員との距離が非常に近いことも特徴です。