認知症の人を心理学で支援 行動観察から解決策を発見!

赤くて、丸くて、つるつるする物な~んだ?
リンゴを見た時、なぜ「これはトマトではなくリンゴだ」とわかるのでしょうか? 人は目・耳・鼻などの感覚器官を通して情報を取り入れています。こうして色や匂いを認識することを心理学では「知覚」と呼びます。そして知覚した情報を統合するプロセスのことを「認知」といいます。つまり、リンゴを見た時に得られる「赤い」色や「丸い」形、「甘酸っぱい」匂い、「つるつるした表面」という手触り、「似ているトマトとの比較」といった知識など、さまざまな情報を統合して「リンゴ」だと理解します。この認知に支障が出るのが認知症です。「赤い」「丸い」などの知覚はできても、それらの情報を統合できないため「リンゴだ」と答えることが難しいのです。
ざわざわしたところでも話をできるのはなぜ?
認知のメカニズムを理解し、その人の状態に合わせたかかわりをすることで、認知症の人のこれまで通りの生活を支えることができます。例えば、声をかけても反応がない認知症の人がいました。よく観察すると、特にざわざわした場所で話しかけた場合に反応しないことがわかりました。健康な人は、話している相手の声以外の周囲の雑音を無意識に無視する「抑制」という機能が働きますが、その人は「抑制」が働きにくかったのです。そこで静かな場所で声がけをすると、応答してくれるようになりました。
自分らしく暮らせるケアを
別の事例では、ご飯を数粒ずつしか食べず、食事に時間のかかる人がいました。介助するだけでは自分で食べるという機能を奪いかねません。よく観察すると、ご飯が1粒ずつしか目に入っていないのでは、という視覚性認知の特徴が見えてきました。そこで一口分をノリで巻いて固まりにして提供したところ、一固まりずつ食べられるようになり、食事を時間内に終えられるようになりました。
このように人間の認知や行動のメカニズムに関する理論を用いて観察し、問題の解決策を導き出す心理学の手法が認知症の人の支援に役立っています。
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弘前大学 医学部 心理支援科学科 教授 大庭 輝 先生
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