「見る力」と「動く力」の脳科学

歩くとき、脳の中では
歩いたり、自転車を運転するとき、脳は目から入ってくる情報を駆使しています。自分が動くことで網膜に生じる光の流れを「オプティックフロー」といいます。脳はこの情報を処理し、耳の奥の三半規管が感知する体の加速・傾きの情報や、筋肉からの情報と統合することで、体の動きを制御しています。
脳にはオプティックフローに選択的に反応する領域が複数存在することがわかっています。しかし、どの領域がどんな役割を持ち、相互にどう関連しているのかは、まだ十分には明らかになっていません。
体の動きに伴う、異なる感覚情報の統合
機能的MRI(fMRI)を用いた研究により、オプティックフロー選択性領域のうち脳の頭頂部にある2つの領域が、視覚情報と傾き・加速等の情報の統合処理に関わっていることがわかりました。この2つの領域は、脳の表面上数cm離れた場所に位置しているため、両者をつなぐ構造があると考えられます。そこで、拡散協調MRIという技術を使って、100人の脳が調べられました。その結果、2つの領域をつなぐ白質線維束の存在が確認されました。これは、脳の異なる領域をつないで情報を伝達する、脳内の「ケーブル」のような構造です。
その後の調査により、この白質線維束は19世紀に解剖研究で報告されていながら、長らく見落とされていたことがわかりました。生きている人の脳で観測できるようになったことで、脳の構造と知覚能力や運動能力との関連を直接検討することが可能になったのです。
基礎研究と社会とのつながり
こうした基礎研究の知見は、さまざまな可能性を秘めています。例えば、発達障害による読む力への影響や、段差につまずきやすくなるといった加齢変化などに対し、脳の視覚情報処理の側面からのアプローチに可能性があります。また、コンピュータビジョンやVR技術の発展にも示唆を与えます。
視覚領域の組織特性の個人差や遺伝性を双子データで分析するなど、研究はさらに広がっています。脳と行動の関係の解明に向けた歩みが続いています。
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神戸大学 システム情報学部 システム情報学研究科 システム情報学専攻 准教授 上﨑 麻衣子 先生
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