エサも空気も少ない暗闇がゆりかご? 深海魚の謎を解く

成長すると姿が変わる
例えばマンボウの子どもは全身に長いトゲが生え、ある深海魚の仔稚魚(しちぎょ)は目玉が頭の外に飛び出し、また別の種は腸が体の外に垂れ下がっています。私たちが「魚」としてイメージする姿は親の形であり、子どもの段階ではまるで別の生き物のような外見をしているものが少なくありません。
このため、「この仔稚魚はどの魚の子どもなのか」を特定することは簡単ではなく、ヒレの骨や脊椎骨の数、あるいはDNA分析などを手がかりに調べる必要があります。このように仔稚魚と親の関係を明らかにする学問を「稚魚分類学」といいます。
深海近底層への挑戦
多くの仔稚魚はエサが豊富な水深100メートルより浅い場所で育ち、成長に伴って居場所を変えていきます。そのため、従来の仔稚魚調査は浅い場所が中心であり、深海域の近底層と呼ばれる海底近くは、泥をすくって採取用ネットが破損するリスクが高いため、ほとんど調査されてきませんでした。しかし、深海の海底近くで育つ魚の子どもがいる可能性に注目し、採集器具の工夫を重ねて近底層での採取方法が確立されました。水深1000メートルを超える海底付近の定期的な調査が重ねられた結果、小さいころから海底近くで親と似た姿のまま成長するタイプの深海魚が見つかっています。
深海のゆりかご
水深700~1000メートル付近には「酸素極小層」と呼ばれる、酸素がとても少ない層があります。エサも少ない厳しい環境ですが、天敵も少ないと考えられています。このような場所を「ゆりかご」としてあえて利用する魚がいるのではないかという仮説のもと、層ごとに網を曳いて中・漸深層における「仔稚魚相」の研究も進められています。
稚魚から成魚に育つに連れて、姿を変え居場所を変える魚ですが、その仔稚魚期の形態、移動経路や移動の理由が明らかになっている魚種は限られています。さまざまな場所や深さで稚魚の暮らしを調べることで、魚の一生を理解する手がかりは得られるのです。
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