がんで痩せてしまうのは防げる? 治療を支える栄養学

痩せないことは大切なテーマ
がん治療というと、手術や抗がん剤などが思い浮かぶでしょう。がんへの対抗手段として、こうした治療法にプラスして、治療を続けるための「体を支える研究」も進んでいます。
がんの患者がだんだん痩せていくと、「食欲がないから」「治療の副作用だから」と考えられがちです。しかし、その背景には「がんカヘキシア(がん悪液質)」と呼ばれる状態が関わっていることがあります。がんカヘキシアになると、体重が減るだけでなく、食欲が落ちたり、筋肉が減ったり、強いだるさが出たりします。こうした変化は日常生活をつらくするだけでなく、体力を奪い、治療の妨げにもなります。つまり、がん治療では「痩せない状態をつくること」も大切なテーマなのです。
早い段階から痩せを防ぐ
がんカヘキシアが進むと、がんの治療を施しても、体力が落ちて体が治療に耐えられなくなってしまうことがあります。これを防ぐため、2021年にはがんカヘキシアの患者の食欲を高める薬が登場し、治療を支える大きな助けとなっています。
しかし、この薬が使えるのはがんカヘキシアと診断された後です。そのため、痩せが進む前の段階で、栄養や運動によって体の状態を保つことが重要なのです。そこで今、栄養面から患者を支える方法が探られています。
栄養の研究ががん医療を支える
最近の研究では、がんカヘキシアが進む過程で、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の変化が起きることがわかってきました。腸内細菌叢とは、腸の中に住むたくさんの細菌の集まりです。健康な状態では、さまざまな細菌がバランスよく存在しています。
動物実験では、がんカヘキシアが進むと、腸内細菌の多様性が低下することがわかってきました。そこで栄養学の視点から、どのような成分やプロバイオティクス(乳酸菌など生きた菌を含む食品や機能性食品)が腸内環境の悪化を防げるかを調べる研究が進められています。こうした研究は、患者を支えるだけでなく、がん医療全体を支えることにもつながっていくのです。
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大手前大学 健康栄養学部 管理栄養学科 講師 安枝 明日香 先生
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