カルシウム結合タンパク質をカギに、病気の仕組みを解き明かす

カルシウムイオンをきっかけに
細胞の反応のきっかけとなるものを「シグナル」と呼びます。細胞内のシグナルの一つがカルシウムイオン(Ca²⁺)です。Ca²⁺は小胞体やリソソームなどの細胞小器官に蓄えられており、刺激を受けると細胞質に放出されます。また、細胞外のCa²⁺が流入することもあります。細胞質のCa²⁺はカルシウム結合タンパク質と結びつき、そのタンパク質の構造を変えることで活性化させます。例えば、酵素のプロテインキナーゼCは、Ca²⁺と結びつくことでほかのタンパク質にリン酸基を付加できるようになります。リン酸化されたタンパク質は、その次の反応を進めるのです。Ca²⁺がきっかけとなる反応には、筋収縮や神経の興奮、唾液の分泌などがあります。
細胞死を起こすタンパク質
細胞死を起こすタンパク質として見つかったALG-2も、カルシウム結合タンパク質の一つです。このALG-2を多く発現している胃のがん細胞とそうでないがん細胞では、ALG-2が多いがん細胞の方が、抗がん剤が効きやすいことがわかっています。抗がん剤の中にはDNAを傷つけることで、細胞にダメージを与え、細胞死を引き起こすものがあります。がん細胞にALG-2が多い場合、この効果がより大きくなるのです。その仕組みとして、ALG-2と共に働いて細胞死を誘導するタンパク質が見つかってきています。このタンパク質は、抗がん剤によって発現が誘導されることがわかっています。
神経の病気の原因を解明
アルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患は、神経系にタンパク質の異常な凝集体が生じることが原因で起きると考えられています。アネキシンA11は、Ca²⁺に反応して膜脂質に結合するタンパク質ですが、これに変異があると、ALSの原因となる凝集体を形成しやすいことが明らかになってきています。このような基礎研究の積み重ねにより、神経の病気の原因が解明されつつあります。さらに、その知見は治療にもつながっていくのです。
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