クマが温暖化から植物を救う? 森林生態系を守るには

クマが温暖化から植物を救う? 森林生態系を守るには

森でつながる命

森林には、動物や植物、菌類など多様な生き物が関わり合いながら暮らしています。その関係を解き明かす学問が生態学です。例えば、植物は自分では移動できませんが、動物に果実を食べてもらうことで種を運んでもらいます。動物は食べ物を得ることができるため、互いに利益を得る関係が成り立っています。このように、森の中では見えないつながりが重なり合い、生態系が維持されているのです。

クマが運ぶ高山植物の種

地球温暖化により、植物の生育に適した場所は、より涼しいところへと移っていきます。子孫を残すために、種を運んでくれる動物の存在は一層重要です。夏に実がなる植物は、標高の低いところから順番に熟していきます。それを食べる動物が低いところから高い方へ移動していき、種子が自然に標高の高い方向へ運ばれることが期待されます。
長野県の浅間山を舞台に、ガンコウランという高山植物を対象として、3年間の調査が進められました。その結果、ツキノワグマが種子を少しずつ標高の高いところに運んでいることが確認されました。ここで使われたのが、酸素同位体分析という手法です。種子に含まれる酸素の同位体比は標高によって異なるため、クマのふんから取り出した種子を分析すれば、どの標高で実ったものかがわかるのです。

生態系での役割理解を

クマは山でさまざまな重要な役割を担っています。例えば、木の樹皮を折って「熊棚」と呼ばれる腰掛けを作ることで、森の中に光を届け、ほかの植物の生育や結実を豊かにしています。近年、クマが人里に出没して深刻な問題となっていますが、有害な働きばかりをしているわけではありません。こうした知見を広く伝えるため、カードゲームなどを活用した環境教育プログラムの開発・実施も進められており、子どもから大人まで効果的に学べることが確認されています。
「害獣」か「益獣」かといった一面的な見方をするのではなく、生態系の中での役割に目を向けることが大切です。それが環境問題を考える第一歩となります。

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長野大学 地域経営学部  教授 高橋 一秋 先生

長野大学 地域経営学部 教授 高橋 一秋 先生

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メッセージ

大学での学びは、受験勉強のように「バランスよくこなす」必要はありません。知的好奇心を刺激されることを見つけたら、効率や時間など気にせずとことん追究してみましょう。研究はデータが取れない年もあるなど、うまくいかないことも多いものです。それでも「面白いからやってみたい」という気持ちだけで飛び込んでいいのが研究の世界です。がむしゃらに取り組んでいると、思いがけないところに面白いテーマが隠れていたりするものです。没頭できる何かを見つけて、その面白みを味わってほしいです。

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