障害のある人たちと一緒に考える「生活の場」

障害のある人たちと一緒に考える「生活の場」

心身の機能だけではない「障害」のとらえ方

「車いすを常に使っている人の障害はどこにある?」と尋ねると、日本人の大多数が足を指し示すように、「障害」といえば体や心の機能のイメージがあります。しかし、街中の段差、差別や偏見など、「環境や社会そのもの」が障害となって、その人の社会への参加の機会などを制約しているととらえることもできます。心身機能、身体構造といった視点だけでなく、本人の目線で「環境が生活のしづらさを生んでいる」などと原因を把握して、社会全体を見ながら調整していくという視点も、社会福祉を考える上で必要なのです。

施設以外の選択肢がない

日本では、障害のある人の1割にあたる約12万人が入所施設で暮らしています。集団での生活の中では、決められた食事や入浴の時間など一定の制約があるため、在宅で暮らす方が自由だと思うかもしれません。しかし施設で暮らす人々に行われた「生活の場」のアンケート調査の結果では、「施設を出たいとは思わない」という人が半数以上という結果が示されています。なぜ、そう思うのでしょうか? インタビュー調査をしてみると、在宅での生活環境が整わないために、施設以外の選択肢がないといった実情や複雑な思いが見えてきます。今の日本では、どういった課題を持っている人たちが入所施設にいるのかが整理できていません。施設で生活する選択をしている理由や背景など、今後もきちんと把握して議論していく必要があります。

自分の意思を実現できる社会に向けて

施設を出て生活し始めた人と一緒に、入所中の人にインタビューを行う調査もあります。入所中の人から「今どうやって生活してる?」など逆に聞き返される場面があり、会話の中で、これまでとは異なる意向を引き出すことがわかりました。このように当事者の力を借りて調査を行うことも、社会課題へのアプローチになります。誰もが自分の意思を実現できる社会をめざすために、障害のある人々が活躍できる土壌をつくり、一緒に社会をつくっていくことも、社会福祉のミッションなのです。

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長野大学 社会福祉学部  准教授 相馬 大祐 先生

長野大学社会福祉学部 准教授相馬 大祐 先生

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社会福祉学

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メッセージ

日本の社会は、今後若い世代がどんどん少なくなるので、あなたの世代がこれからの社会の核になると考えられます。これは日本に限った話ではなく、世界でも重要な位置づけになると思います。大学生活は「たった4年間」かもしれませんが、自分のやりたいことを精一杯やって、いろいろな経験をしてください。社会福祉の関係者の方々は接しやすい方が多く、私も学生時代にそうした方々との関わりの中で得るものが多くありました。学業でもアルバイトでも、いろいろな人に接しておくと、社会に出た時にきっと役に立つと思います。

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長野大学は、1966年に地域の熱い期待を背負って誕生した「地域立」の大学です。本学は地域にある課題を発見し、地域とともに解決していく実践的な学びを大切にしています。地域には豊かな自然環境や歴史が宿る文化遺産、経済を牽引する産業や観光資源、安心して暮らせるまちづくりなど学びの要素があふれています。地域社会をフィールドに、主体的に考える力や、問題に対して多面的に取り組む力を養いながら漠然とした問題を明確化し、逆境に立ち向かっていける足腰の強い人材を育成します。