講義No.16068 日本文学

「聖地巡り」が持つ意味は 文学作品を地域性で読み解く

「聖地巡り」が持つ意味は 文学作品を地域性で読み解く

聖地巡礼の原点

近年、アニメやドラマのロケ地を巡る「聖地巡礼」が話題となっています。文学や作家のゆかりの地であることをアピールする地域活性化策は昔からあるものですが、その原点とも言えるのが、川端康成の『伊豆の踊子』です。伊豆を舞台にしたこの作品は繰り返し映画化されるほどの人気を博し、そのために伊豆を訪れる人も多いため、地域として『伊豆の踊子』をアピールしてきました。同じような動きは現在、日本各地で広がっていますが、地域活性化だけでなく、作品をより掘り下げる一助としても注目されています。

「地域」がもたらす影響とは

作家が作品の舞台に選んだ土地、あるいは作家が作品を書いた土地には、作品を読み解くヒントがたくさん存在しています。また、作家が意図したかどうかを問わず、作品にはその土地の空気感や風土が織り込まれているものです。
静岡県藤枝市出身の作家・小川国夫は、若いころにヨーロッパを放浪した体験を元に、『アポロンの島』など地中海を舞台にした作品を書いています。彼の足跡や作品を調べていくと、日本国籍を取得したギリシャ出身の作家・小泉八雲からの影響があることがわかります。地中海に生まれた八雲は静岡県焼津の海を気に入り、毎夏、家族とともに焼津に滞在していました。地域性という点に着目すると、そうした作家同士や作品のつながり、影響も見えてきます。

愛着を示す文化資源

静岡県の駿河地域では、中勘助、小泉八雲、小川国夫など、地元にゆかりのある作家の記念館が建てられており、それらの記念館や作品の舞台となったゆかりの地を巡るツアーやスタンプラリーが開催されています。こうした活動は、地域の人々が文学や作家の存在を「文化資源」として大切にしてきた証拠です。文学とは、作家が土地への愛着や思いを作品に込めた「過去を閉じ込めたタイムカプセル」のようなものです。現在を生きる私たちは、それを「文化資源」として現代から未来へとつないでいくため、聖地としてのPRなどさまざまなアプローチを試みているのです。

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先生情報 / 大学情報

静岡県立大学 国際関係学部 国際言語文化学科 教授 細川 光洋 先生

静岡県立大学 国際関係学部 国際言語文化学科 教授 細川 光洋 先生

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メッセージ

文学というものは、活字の中だけで完結するものではありません。高校の授業では、さまざまな文学について、「この作品の主題は何か」といった形で読んできたと思いますが、もっともっと自分に近づけて作品を読んでみてください。文学にはいろいろな読み方、味わい方があります。作品の書かれた場所に行ってみることもその一つです。そうした体験を通じて、活字だけではわからなかった作品の魅力や地域の魅力に触れることで、文学の味わいはより深まります。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

静岡県立大学に関心を持ったあなたは

静岡県立大学は、5学部9学科を有し、国際化・情報化・高齢化・環境問題という21世紀における最重要課題を展望しつつ、新しい時代を支える有為な人材の育成を目的としています。自主性や公共性を強く意識し、地域社会からの評価を得られるように、大交流時代において選ばれる大学を目指します。研究分野では、文科省のグローバルCOEプログラムに採択され、研究レベルが国内トップクラスといえます。