山や農作物を荒らすシカを食資源に ジビエがつくる循環・共生社会

野生鳥獣による深刻な被害
シカやイノシシなどの野生鳥獣が近年増えており、農作物被害額は国内で年間約160億円と甚大です。シカが山の草木を食べて枯れさせ、土砂崩れが起こるなど、自然環境への影響も心配されています。天敵であるオオカミの絶滅、戦後の鳥獣保護政策、温暖化による越冬などで、生態系のバランスが崩れており、管理捕獲をしていかなくてはなりません。
ヨーロッパにはジビエという、狩猟シーズンに野生鳥獣の肉を楽しむ文化があります。仕留めた命を食資源として活用することが循環型社会や共生につながるとして、日本でもジビエの安全性やおいしさに関する研究が行われています。
おいしさの決め手は
シカ肉は「腕のいい猟師が仕留めると味がいい」「ドングリを餌にしているとおいしい」など、いろいろな説があります。それらを科学的に検証すると、捕獲のときにシカが受けるストレスや、仕留めた後の処理方法、時間経過によって、肉のpHが変化すること、ある一定の範囲にpHが保たれていると、柔らかくて臭みもなく、おいしいことがわかりました。わなにかかったシカを早期に発見し、長く苦しませずにとどめを刺し、その場で血を抜き、野生鳥獣用の食肉加工センターに持ち込んで衛生的に食肉化するという、一頭一頭を丁寧に処理することが重要です。
ソウルフードで共存共栄
シカ肉は低カロリーで高たんぱく質、金属探知機にかかることがあるほど鉄分が豊富で、アスリートも注目する食材です。一方、よく知らないものを食べるのは不安という人も少なくありません。そこで、高級レストランのジビエよりもっと手軽にシカ肉を手に取ってもらおうと、静岡県の伊豆(天城)で、捕獲されたシカの肉を使った「イズシカめんち」というB級グルメを、大学と食堂を営む企業が共同開発しました。シカの食害に遭っている地元名産のワサビと原木シイタケもメンチには使われています。野生鳥獣と地場産品がメンチカツの中で共存共栄を図るという、新たなソウルフードが、ジビエを身近な存在にしてくれるかもしれません。
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