よく起こるけがなのに謎だらけ、肉離れの正体

よく起こるけがなのに謎だらけ、肉離れの正体

その「ブチッ」、なぜ起こる?

筋肉はゴムのように伸び縮みする柔らかい組織ですが、強い力がかかり過ぎると切れてしまいます。「ブチッ」という感覚とともに動けなくなる「肉離れ」は、スポーツをする人にとって身近なけがです。特に太ももの裏(ハムストリング)に多く、突然起こるのが特徴です。
実は肉離れの正体はまだよくわかっていません。現在、スポーツ医学の分野では、この肉離れが「なぜ起こるのか」を明らかにする研究が進められています。

見えない原因にどう迫るか

研究の最大の壁は、決定的な原因が一つに絞れないことです。筋肉の硬さ、体の使い方、年齢、過去のけが、さらには遺伝的な体質まで、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。そのうえ予兆がほとんどなく、データとしてとらえにくいのです。
こうした壁を乗り越えるために、研究では新たなアプローチが試みられています。例えば、筋肉の硬さを超音波で測定する技術や、走り方などのフォーム解析、さらには遺伝情報から「けがをしやすい体質」を探る研究です。これらを組み合わせることで、これまで見えなかった肉離れのリスクを可視化しようとしています。
近い将来、デバイスやセンサの進化によって、トレーニング中に筋肉の状態や負荷をリアルタイムで把握できるようになるかもしれません。そうなれば、「今日はリスクが高いから負荷を下げよう」といった判断が可能になります。

経験頼みから科学的基準へ

現在、肉離れからの復帰タイミングは、はっきりとした基準がなく、医師やトレーナーの経験に頼る部分が大きいです。「ここまで回復したらOK」と数値で判断できないため、復帰が遅れたり、逆に早すぎて再発したりすることもあります。そこで研究では、筋肉の状態を正確に測る技術や、けがをしやすい人の特徴を明らかにすることで、科学的な判断基準の確立をめざしています。将来は、けがを未然に防ぎ、より早く安全に復帰できる仕組みが整う可能性があります。身近な肉離れから、スポーツの未来を変える研究が進んでいます。

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順天堂大学 スポーツ健康科学部  准教授 塩田 有規 先生

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