ロシア文学は魅力がいっぱい 楽しみ方が広がる読書の方法

読者として読む
ロシア文学といえば、トルストイの『戦争と平和』やドストエフスキーの『罪と罰』を思い浮かべるかもしれません。これらを含む19世紀の作品は、内容が込み入っていて、難解な印象を持たれがちです。しかし、登場人物や物語の展開に目を向けると、風変わりで個性の強い人物たちがドタバタやりあったり、そうかと思えばメロドラマ的な展開に進んだりなど、意外と気軽に楽しめる面もあります。今風の切り口であれば、「映像化するなら俳優は誰か」「推しのキャラクターは」といったテーマで盛り上がることもできるでしょう。「暗い」「重い」「長い」というイメージがいまだに付きまとうロシア文学ですが、そんな紋切り型のイメージをやすやすと吹き飛ばすような作品も、実はたくさんあります。
研究者として読む
文学作品は単独で生まれるのではなく、さまざまな作品との関わりのなかで生まれます。ひとつの作品の背後には無数の作品が網のように絡まりあって広がっています。その網をときほぐし、歴史的な観点から整理することも研究者の重要な仕事です。作品がはらむ歴史的な面白さは、作品の価値評価とは必ずしも一致しません。忘れられた一篇の小説が、文学史を再考するうえで欠かせないピースとなることもありえます。そうした作品を「発見」するのは、研究者としてもっとも心躍る瞬間です。
翻訳者として読む
私たちは翻訳を通じて海外文学に触れます。翻訳とはたんに言葉を置き換えることではなく、言語芸術を別の言語で再現することです。したがって、訳された文章も文学になっていなければなりません。たとえばセリフひとつをとっても、登場人物の性格や声色も考えながら言葉を選びます。もっとも、実際の翻訳はきわめて地味な作業です。種々の辞典や文献を調べ、論理的に訳語を選択します。それでも最後のところでは、自分がどう読んだのかがまるごと問われます。そこに、訳者が想像力を働かせ、感覚を研ぎ澄ませる余地もあるわけです。訳すことは文学作品を楽しむ究極の方法といえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報

千葉大学 文学部 人文学科 国際言語文化学コース 准教授 高橋 知之 先生
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