カワイイだけじゃない! 妖精たちが教えてくれること
実は身近な「神話」「伝説」の世界
スマホゲームや家庭用ゲームには、ヨーロッパの神話や伝説のキャラクターがたくさん出てきます。例えばオーディンやヴァルキリーは北欧神話の神様、クーフーリンやアーサー王はケルト伝説の英雄、ゴブリンやエルフは妖精です。ファンタジー小説や映画にも、ディズニー作品やハリー・ポッターシリーズなど、伝説のキャラクターやプロットをモチーフにしたものがたくさんあります。神話や伝説は、大昔から口承で受け継がれ、ある時期から文字におこされ文学として成立しました。それが現代では、本だけでなくゲームでも楽しめるほど身近なものになっているのです。
アイルランドにも「浦島太郎」のお話が!
アイルランドのケルト伝説に「オシーン」という話があります。ある日出会った美しい女性と、彼女の国で楽しい時を過ごしたオシーンは、帰り際に「決して馬から降りてはならない」と女性に告げられます。故郷に帰るとそこはずっと後の時代で、馬から落ちたオシーンは老人になってしまいました。「馬」と「玉手箱」が違うだけで、日本の「浦島太郎」とそっくりです。このように、伝説や民話には国を超えたユニバーサルな側面があります。それは文学が、人間が共通して持っている知識や体験などによって生み出されたものだからです。
「人知を超えたもの」の存在
アイルランドでは、いまも「妖精」は身近な存在です。道路には「妖精に注意」という標識があり、「妖精の家」や「妖精の樹」もあります。それらを侵して妖精を怒らせたら災いが起こるとされ、わざわざその樹を避けて道が曲がっている場所さえあります。同じような考えは少し前までの日本にもありました。神仏や妖怪の存在を信じて、いろいろなしきたりやタブーが守られていました。そこには、人間は生物のトップではなく自然の一部であり、人知を超えたものに生かされている、という考えが根底にあります。科学が発達した現代でも、そういう謙虚さが必要だと、妖精たちは教えているのかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
関西大学 文学部 総合人文学科 教授 高橋 美帆 先生
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