動物だって個性がある! 「イヌ」ではない「タロウ」の研究

種類ではなく、個体を見る
動物行動学が大切にしているのは、個体を見ることです。例えばイヌは、シバイヌやチワワ、ボーダーコリーなど犬種で区別されます。しかしその中の1頭ごとに、見た目や性格、経験してきたことは異なり、人間と同じように個性もあります。動物行動学ではイヌやオオカミといった動物の種類ではなく、「シバイヌのタロウ」といった個体を研究することからスタートします。野生動物を研究する場合、個体を見分けるために、傷や模様など、わかりやすい違いを見つけるところから始めます。ただ、研究するうちに個性が見えてきて、遠くからでも、歩き方や姿勢などでもわかるようになります。研究者だけでなく、動物に関わる人たちは皆、この個体に対する感性が鋭くなっています。それが動物と関わるということなのです。
人との暮らしに適応して進化
イヌに最も近い野生種はオオカミです。ほんの4万年~1万5000年前くらいに、オオカミの中に人の生活に近づいてきた亜種があり、それがイヌになったと考えられています。そのため、イヌは人のそばで暮らすことに適応した進化をしてきました。その一つが「吠え」です。イヌの吠えは情動(感情)の支配から少し自由になっていて、いろいろな場面で吠えたり、学習して吠えるようになったりします。家畜や人を守るために役立つことから、人は「よく吠える個体」を歓迎し、その結果「よく吠える個体」が増えて、オオカミに比べてよく吠えるイヌが誕生したと考えられます。
感性で行動を見極める
動物行動を観察する時には、言語から離れることが求められます。例えば「イヌ」という言葉は、たくさんのイヌ個体をまとめた全体を表しますが、注目すべきは一般的な「イヌ」ではなく、目の前の「この個体」です。また私たちは感情を「恐怖」や「不安」といった言葉で表しますが、その感情自体は観察できません。できるのは、感情が影響を与える行動だけです。そのため、言語から離れ「個体」の「行動」に集中する感性を磨くことが必要になるのです。
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帝京科学大学 生命環境学部 アニマルサイエンス学科 教授 藪田 慎司 先生
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