「害虫予報」で農業の未来を守る

害虫防除の多様な技術
私たちが日々食べる野菜やお米を安定して手に入れられるのは、さまざまな害虫防除技術のおかげです。「化学的防除」である農薬は速効性があり、適用範囲も広く、適切に使用すれば安全性も保証されています。しかし地球温暖化による害虫の変化や外来害虫の侵入、農薬への抵抗性といった問題があり、農薬だけでは限界があります。
そこで天敵の昆虫を活用する「生物的防除」、防虫ネットや粘着トラップによる「物理的防除」、害虫が発生しにくい環境をつくる「耕種的防除」などを組み合わせます。対策を考える際は、防除のコストが想定される経済的被害を下回るようにすることが肝要です。
発生予測を地図で可視化
防除を効率よく進めるには、害虫の発生や被害を事前に予測することが求められます。「いつ・どこで・どの害虫が発生するか」がわかれば、農家は必要な時期にピンポイントで対策を打つことができます。そこで、気候、地形、土地利用、作物の栽培時期、害虫の発生時期や数といったデータを組み合わせ、害虫発生の予測モデルが作成されました。これを使ったシミュレーションにより、栽培時期を1週間前倒しするだけで害虫被害のリスクが大きく下がる場合があることも示されています。1km四方の格子単位で発生確率を計算して地図上に可視化したリスク地図は、関係者への説明や合意形成の役に立ちます。
将来の農業戦略に
この予測モデルが特に力を発揮する場面の一つが、将来予測への応用です。温暖化により平均気温が上昇するシナリオをシミュレーションに当てはめると、現在は一部地域にとどまっている害虫被害が、2050年にはより広い範囲に拡大することが見えてきます。害虫が大発生してから対策を始めるのでは克服まで何年もかかりますが、あらかじめ未来を知っておけば、品種の改良や栽培時期の調整、新たな対策技術の開発などの準備を、余裕をもって進められます。データが描く予測地図は、食料生産を守る羅針盤として、将来の農業戦略の立案などにも役立てられることが期待されています。
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