人を引き込む暗黒舞踏の世界 謎めいた踊りはなぜ心をつかむのか

人を引き込む暗黒舞踏の世界 謎めいた踊りはなぜ心をつかむのか

日本から世界に広がる暗黒舞踏

白く塗った顔、ゆっくりとうごめく体、見る人をのみこむような雰囲気。そんな舞踏を見て、「何これ?」と強い衝撃を受ける人は少なくありません。よくわからないのに目が離せない、それが「暗黒舞踏」の大きな魅力です。20世紀の日本で生まれたこの表現は、1970年代後半から世界に広がり、海外のダンス関係者にも「Butoh」として通じます。白塗りが定着した暗黒舞踏ですが、その起源をたどると創始者・土方巽(ひじかた たつみ)が最初の作品で行ったのは、実は黒塗りでした。そこには戦後の黒人文化の影響が見られます。その後、土方はいくつも実験的な踊りを生み出します。なぜこんなに不思議な踊りが、世界中の人の心をつかんだのでしょうか。

創始者の言葉から浮かび上がる背景

研究の中心にあるのは、暗黒舞踏の共同創始者である舞踏家、大野一雄の身体表現が、どのように生まれたのかという問いです。研究では、映像や写真、上演記録、批評記事を読み解くだけでなく、作品づくりに関する大量の言葉も検証されました。即興のように見える踊りも、実は約5000枚に及ぶ未公開資料に書き残された言葉に支えられていました。それをたどっていくと、大野一雄の舞踏がモダンダンスや体操、パントマイムの影響を受けていたことが見えてきます。さらに、戦時中に中国大陸やニューギニアで過ごした過酷な従軍体験が、作品の背景にあることも浮かび上がってきます。

身体表現はどのようにつくられるか

大野一雄の息子で舞踏家でもある大野慶人の稽古風景も手がかりにしながら、表現がどのようにつくられるのかという研究が進んでいます。例えば稽古では、「バラの花になって歩く」といった課題が出されます。大切なのは、動きをまねることではなく、そのイメージで体の動きや状態がどう変わるかです。また「まっすぐ歩く」という一見シンプルな動作も、体のブレをなくそうとすると実はとても難しいものです。よくわからないのに目が離せないという感覚の正体は、そこにあるのかもしれません。

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福岡女学院大学 人文学部 言語芸術学科 准教授 宮川 麻理子 先生

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メッセージ

「よくわからないのに、なぜか気になる」と感じた経験はありませんか。それこそが学びの入り口です。一見理解しがたいものにも距離を置かず、「なぜだろう」と考えてみましょう。その好奇心が、自分の世界を広げる大切な一歩です。すぐに結果は出なくても、一つの物事にじっくり向き合う姿勢が、自分の世界を開いてくれます。高校時代に取り組んでいたことが、思いがけず将来の学びや仕事につながることもあるでしょう。大学では、さらに多様な人と価値観に触れることで、新たな関心を見つけることができます。

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