伝統を科学し、地震に強い木造建築を造る

軽視されてきた木造の耐震研究
日本での耐震研究は従来、大型ビルなどの鉄筋コンクリート建築を主な対象としてきたため、民家に多い木造住宅は軽んじられる傾向にありました。状況が変わったのは、1995年の兵庫県南部地震や2000年の鳥取県西部地震が起きてからです。たくさんの民家が倒壊して大きな被害を受けたことを機に、木造建築の耐震性に対する関心が高まり、研究が進むようになりました。
一筋縄ではいかない耐震性
建物の耐震性は、地盤や建築構造などさまざまな要因が複雑に絡み合って決まります。そのため、この構造なら絶対に安心だと一概に言い切れない難しさがつきまといます。こうした背景のもと、木造建築の耐震性能を解明すべく、実物大の構造体をさまざまなパターンで作成し、多方向から負荷をかけて、どの程度耐えられるのか検証する実験を行います。そこで得られた変形や耐震性のデータを理論と結びつけることで、地震に強い建築の検討に役立てていきます。2025年には建築基準法が改正され、木造住宅でも建物の安全性を科学的に確認するために構造計算を行うよう義務化されました。この改正によって現場の負担は増えましたが、木造住宅の耐震性がより確実なものとなっています。
伝統技術を現代の建築に生かすために
耐震研究は遅れていた木造建築ですが、例えば日本の伝統的な土塗り壁は、優れた調湿や防火機能を持つことから、環境にやさしい建築として再び注目を集めています。エコな反面、工期が長くなる点や左官などの職人が減っている点など、課題も少なくありません。文化財や歴史的建造物の修復が必要になった際、職人の減少により技術が途絶えてしまうと、維持管理そのものが不可能になります。例えば京都の京町家では、建具職人の不足から、通りに面した窓の装飾を修理したくてもかなわない状況が生まれています。こうした事態を避けるためにも、耐震研究だけでなく、伝統的な建築技法を研究・継承し、その技法を今の建築に生かす方法を考えていく必要があります。
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