誰が為に鐘は鳴る―私たちに遠くの人々を保護する責任はあるか?

他国の人道危機から目を背けない
国際的に議論されている重要なテーマとして、「保護する責任」(Responsibility to Protect: R2P)があります。「国家および国際社会には、重大な人道危機から人々を保護する責任がある」という概念です。1990年代に国内紛争が多発しましたが、内政不干渉という国際ルールが障壁となって、国際社会は人道危機から人々を保護することができませんでした。そうした失敗の反省から、2001年にR2Pが提唱されました。R2Pは、ほかに有効な手段がない場合、最終手段として軍事介入を許容することもある為、論争の的となっています。
「保護する責任」が問題の原因に?
R2Pは国際社会が協力して人道危機の被害を減らす為の重要な概念です。しかし、R2Pはむしろ国際問題の原因になる、という批判も多くあります。例えば、2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻では、「ウクライナのロシア系住民を保護する為だ」という主張もなされました。この主張はR2Pの濫用であるという国際的な共通認識ができていますが、こうした濫用の危険は払拭されていません。また、2011年のリビア内戦では、R2Pを一つの根拠として国際的な軍事介入が行われました。しかし、介入後にリビア国内が不安定化し、R2Pへの批判が強まりました。
発展途上の概念—私たちにも責任はある?
R2Pはまだ発展途上の概念です。誰がどのような責任を負うのか、必ずしも明確ではありません。「国家や国際社会に責任がある」と言う時、その国家や国際社会とは誰のことなのでしょう? 私たちは皆、政治や経済、そのほか様々な形で「遠くの人々」とつながっています。直接または間接的に人道危機に関わってしまっているかもしれません。そうだとしたら、私たちも「国際社会の一員」として、何らかの責任を担うべきではないでしょうか。R2Pが人道危機に「警鐘を鳴らす」のは「誰の為」なのか、私たちに遠くの人々を保護する責任はないのか、考える必要があるのです。
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