江戸の「俳諧」はSNSに通じる? 言葉の今昔が映す人の心

対話を楽しむ「連句」の文化
連句は、五七五の句から始まり、七七、五七五、七七……と複数人でつなぎながら、長いものは100句続けます。句の解釈が、前の句と結びつくか、後ろの句と結びつくかでがらりと変わるのが最大の特徴です。言葉遊びや曖昧な表現も多用され、日本語の特性を最大限に生かしたやり取りが楽しまれてきました。江戸時代の俳人、松尾芭蕉もまたその1人です。旅先で出会った俳人たちと連句を巻いて、感性をぶつけ合いながら仲を深めていきます。連句は作品であると同時に、人と人をつなぐコミュニケーションのツールでもあったのです。
「季語」は変化する
連句と切り離せないのが「季語」の存在です。連句には雑(ぞう)という季節のない句もあり、1つの季節は3句程度連続して詠むルールがあります。それを利用して、まだ歳時記にない言葉が試されることがありました。季節を表せそうな言葉をその季節の前後に出したり、3句の間に挟んだりしながら様子を見て、その場で認められれば、発句でも試します。こうして歳時記に収載される「季語」に定着することもあります。人々が使い共有することで「季語」になっていくのです。
「季語」は時代とともに変わります。例えば、春の季語「蛙:かはず(カエル)」は、細分化されたことにより、梅雨のイメージと結びつく「雨蛙」が夏へとずれました。季語の変容は今も続いています。
言葉は時代を映す鏡
言葉の変化には、その時代の文化や人々の暮らしが映されます。一方で、美しいものや嫌なものに抱く感情は時代を経ても変わりません。今ここにある感動を誰かと共有したいという衝動は、現代のSNSに通じるものがあります。短い言葉でのやり取りは、状況や言葉の意味の理解が同じであるという前提のうえで成立する、信頼関係にもとづいたコミュニケーションなのです。連句や季語の研究は、詩的表現の言葉がどのように生まれ、認識されて共有されたのか、そしてどのように変わり、受け継がれてきたかを明らかにしながら、時代を超えた人の心を読み解く学問です。
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玉川大学 文学部 国語教育学科 准教授 野村 亞住 先生
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