企業は自社の歴史をどう語る? 社史から見える組織の変化

歴史の「語り」が持つ意味
企業は節目ごとに自分たちの歩みを振り返り、歴史を総括することがあります。その手段の一つが社史です。歴史とは、過去の出来事の羅列ではありません。あなたが学校で学ぶ歴史の教科書も、何を載せて何を載せないか、どのような視点で語るか、という判断の積み重ねで成り立っています。企業の歴史語りも同様で、企業が歩んできた歴史の何を強調し、何を省くかという編集意図が常に伴います。そしてその語る内容は、例えば校歌が学校共通のアイデンティティとなるように、従業員が一丸となるための共通の記憶として機能します。こうした企業の歴史語りの戦略的な面を「レトリカル・ヒストリー」と言います。
価値基準は時代で変化
ある企業では、創業者が神格化され、その言葉が絶対的な判断基準として歴史に刻まれてきました。しかし組織が構造改革の必要に迫られたとき、創業者の言葉は現代の文脈で再解釈されるようになり、やがて従業員一人一人が自分たちの歴史として共有するためのナラティブ(語り)へと変化していきました。このほか、創業者の言葉や企業の歩みを広報戦略として対外的に活用するなど、歴史を自社のイメージ形成に積極的に役立てる企業もあります。
歴史の語り方は企業によって異なり、同じ企業でも時代や状況によって変化します。歴史をどのように語るかは、その組織が何を大切にしているかを映し出していると言えます。
次世代へ語り継ぐ
伝統芸能の世界では、「型」を正確に受け継ぎながら、自分なりの解釈を付け加えることで芸を継承していきます。企業における歴史の語り直しも構造的によく似ています。共通の「語り」を受け継ぎながら、現在の文脈で解釈し直し、歴史を語り継いでいくことが、組織を次世代へつなぐ支えになります。
企業の歴史を学ぶことは、近代社会の仕組みがどのように出来上がってきたかを知ることです。それは社会を理解し、その仕組みの中で主体的に生きる力につながるはずです
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日本大学 商学部 経営学科 准教授 長谷部 弘道 先生
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