設計して、働かせる。 微生物で薬の原料を作る合成生物学

設計して、働かせる。 微生物で薬の原料を作る合成生物学

作って理解する生命科学

合成生物学は、生物を観察して理解するだけでなく、DNAや遺伝子を設計し、実際に細胞の中で動かすことで生命の仕組みを理解する学問です。ゲノム解析やAIの発展により、生命の設計図を読み解き、必要な遺伝子を選んで組み合わせることが可能になってきました。生物の部品を組み立て、試し、結果をもとに再設計するサイクルを繰り返すことで、細胞に新しい働きを持たせることができます。生命を「作って調べる」ことで、観察だけでは見えなかった仕組みが初めて理解できる、これがこの分野の大きな特徴です。

微生物を細胞工場にする

医薬品の原料には、植物から少量しか得られず、栽培や抽出に多くの手間がかかるものがあります。そこで注目されているのが、微生物を小さな工場として活用する方法です。植物が持つ遺伝子や酵素の働きを微生物に導入し、糖などの原料を目的物質へと変換する代謝の流れを構築します。ただし、遺伝子を入れるだけでは不十分です。どの遺伝子をどれくらい働かせるか、細胞のどこに組み込むか、いつ動かすかを緻密に設計しなければ、細胞は思いどおりに機能しません。生物学と工学を結びつけるこの難しさに、研究の醍醐味があります。

どう作るかを設計する

この研究の核心は、微生物に物質を作らせることではなく、「どう作るか」を設計することです。DNAを合成する技術、遺伝子を安定して働かせる配置、必要なときだけ動くスイッチ、複数の代謝反応の流れ、これらを組み合わせることで、目的物質を安定して産生する細胞工場をめざします。設計通りに動かない原因を分析し、次の設計へ反映させることも欠かせないプロセスです。合成生物学は、医薬品原料にとどまらず、食品素材や環境にやさしい化成品など幅広い分野に広がっています。生命の仕組みを理解し、それを社会のために働かせる、この学問はものづくりの未来を支えています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京電機大学 理工学部 生命科学系 准教授 高橋 俊介 先生

東京電機大学 理工学部 生命科学系 准教授 高橋 俊介 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生物物理学、バイオプロセス工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

合成生物学は、DNAや遺伝子を設計し、生き物に新しい働きを持たせる学問です。組み立てブロック玩具のように設計し、細胞の中で実際に動かし、結果を見てまた設計する。その繰り返しに大きなワクワクがあります。微生物は小さな細胞工場であり、医薬品原料や化成品など、環境負荷を抑えながら社会に役立つものを作れる可能性があります。あなたが「生命の不思議さを使って何かを作りたい」と感じるなら、この分野できっと心を動かす研究が見つかるはずです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京電機大学に関心を持ったあなたは

東京電機大学は、1907年の創立以来、日本の産業界を支える技術者を数多く輩出してきた理工系総合大学です。以下の5学部2キャンパス体制で、建学の精神「実学尊重」、教育・研究理念「技術は人なり」のもと、実際の社会で活用できる技術と人格を携えた技術者の育成を大切にしています。
●システムデザイン工学部・未来科学部・工学部・工学部第二部(夜間部)〔東京千住キャンパス〕、●理工学部〔埼玉鳩山キャンパス〕