人にもAIにも最適な「目」をデザイン

「自分に合う目」を実現
同じ景色を見ていても、人によって見え方は微妙に違います。目に入った光の情報を認識するのは脳の働きであり、その解釈は一人一人異なるからです。この個人差に着目した「画像強調」の研究が進められています。
例えば、工場での画面越しの検品作業や、群衆の映像から特定の人を探す場合、作業者の色覚に合わせて画像の色味やコントラストをわずかに調整するだけで、作業速度が向上するという結果が出ています。さらに、強化学習によって使えば使うほど最適化されれば、「自分に合う目」が実現できます。
AIと人の見やすさは違う
スマートフォンのカメラは、人が見て「きれい」と感じる画像を撮るように設計されています。しかし、AIがさまざまなタスクをこなす際に認識しやすい画像は、人が見やすいものとは異なる場合がほとんどです。これまでのAI研究の多くは、SNSなどで収集した人間向けの画像を大量に学習させるアプローチが主流でしたが、学習のしやすさという点でAIにとって必ずしも最適ではありませんでした。
そこで、人の視認性を保ちながらAIの認識精度も高める「両立型カメラ」の開発が進められています。1台のカメラで人と機械の双方に適した画像を撮影できれば、人と機械の共同作業がよりスムーズに行えます。例えば、警備ロボットが異常を検知し、その映像を人間の警備員が確認しながら対応するといった場面でも役立ちます。この場合、警備員それぞれの見え方の違いも反映できれば、さらに大きな力を発揮します。
SF映画の世界を現実に
こうした研究は、AIやロボットが身近になる中で、人と機械が互いの得意な部分を生かしながら協力する未来をめざすものです。動物が進化の過程で目的に合わせた目を発達させてきたように、人にとっても機械にとっても最適な「目」をデザインすることが、めざす未来に近づく手段の一つです。SF映画で見たような世界を形にし、10年後、100年後の当たり前をつくることが、研究者の役割なのです。
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