1本のワイヤの腐食が橋を落とす 寿命診断の新技術を開発

1本のワイヤの腐食が橋を落とす 寿命診断の新技術を開発

崩落事故の教訓

2019年、台湾で「南方澳(なんぽうおう)大橋」という橋が突然崩落し、5人が死亡する事故が起きました。原因は、橋を支えるワイヤのうち、たった1本が腐食によって切れたことでした。吊橋の主ケーブルや斜張橋の斜ケーブル、アーチ橋のハンガーロープなどでは、ワイヤを束ねた太いケーブルが構造の要となるため、その中のワイヤの破断が全体のバランスを崩し、連鎖的な崩壊につながることがあります。1本でも切れると、その分ほかのワイヤの負荷が増していくためです。この事故は、見えにくい劣化が重大な結果を招くことを示す象徴的な出来事でした。

目視点検ではわからない危険

日本には70万以上の橋があると言われており、その多くは高度経済成長期に建設され、現在は老朽化が進んでいます。一方で、橋を点検・管理する技術者は減少しており、すべてを熟練者の経験や勘だけで判断することは不可能です。現在は、5年に一度の目視点検が基本ですが、さびの進行や内部の劣化を目視で正確に評価するのは容易ではありません。さびることでワイヤは徐々に細くなり、切れやすくなりますが、見た目だけで寿命は割り出せません。そこで、腐食の程度から橋の寿命を分析する研究が進められています。

誰でも判断できる点検をめざして

研究では、腐食したワイヤを人工的に再現し、荷重を繰り返し与えて、どの程度で破断するのかを測定し、腐食のレベルと寿命の関係を明らかにしようとしています。また、赤さびの割合など外見の情報を画像解析して数値化し、劣化の程度を客観的に評価する手法の開発も進められています。
これは、将来的に現場で撮影した画像から橋の状態を即座に判断できる仕組みをめざすものです。例えば、カメラを搭載したメガネを使えば、画像解析による客観的な評価をその場で確認でき、橋のおおよその寿命を即座に把握できるかもしれません。経験に頼らず、誰もが同じ基準で社会インフラの安全性を判断できる未来に向けて、取り組みが進んでいます。

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東京電機大学 理工学部 建築・都市デザイン学系 准教授 宮地 一裕 先生

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構造工学では、物理や化学の知識が基礎となります。そのため、高校生のうちからこれらの基礎をしっかり身につけ、それがどのように社会で使われるのかを意識しておくことが大切です。またAIも重要な技術の1つであり、土木や建築の分野で今後さらに活用が広がっていくでしょう。AIは便利な一方で、仕事のあり方を変える可能性もあります。だからこそ、その存在を理解し、使いこなせるように慣れておくことが重要です。将来を見据え、基礎と新しい技術の両方に目を向けておくことが大事です。

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