がん治療は「地図のない旅」 コミュニケーションは道しるべ

がん治療は分かれ道の連続 多選択肢の時代
周囲の組織やほかの臓器に拡がったがんの状態を、進行がんといいます。かつては進行がんを治癒するのは非常に厳しいといわれ、治療の目的は延命や症状のコントロールなどが主でした。しかし、医学の進歩により、長期にわたって自分らしい生活を続けることも可能になりました。手術や放射線治療のほか、抗がん剤治療においても分子標的薬、がん免疫療法など、治療の選択肢が増えています。
患者さんの価値観や生活、希望を踏まえて、医療者とともに治療を選んでいく時代へと変わっています。
対話を重ねることで歩みを確かに
人は、がんと診断されたその日から、地図もなく、日程も分からない旅に出たような状態になります。いわゆる「Cancer Journey」の中では、後戻りできない分かれ道が次々と現れ、そのたびに選択を迫られます。主治医は治療方法を説明し、提案します。一方、患者さんは、自分の生活や仕事、家族の状況、そして大切にしたい思いや希望を医療者に伝えます。こうした対話を重ねることで、治療の目標を明確にし、患者さんと医療者が共有していきます。このプロセスを「SDM(Shared Decision Making:共同意思決定)」といいます。がん医療におけるコミュニケーションは、医療者から患者さんへの一方通行ではなく、患者さんと医療者がともに考える双方向の対話へと変わってきています。
Cancer JourneyとSDM
がん治療の進歩に伴い、患者さんとのコミュニケーションの課題も変化します。
医療者が医学的に正しい情報を伝えるだけでは十分ではありません。患者さんが何を大切にしているのか、どのような生活を送りたいのか、何に不安を感じているのかを丁寧に聞き、対話をしながらともに考える姿勢が求められます。がん治療の進歩は、単に治療法を増やしただけではなく、患者さんと医療者が対話しながら治療を選ぶ時代をもたらしたともいえます。こうした背景から、SDMの重要性が高まっています。
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大阪医科薬科大学 医学部 医学科 教授 藤阪 保仁 先生
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